晩唐7ー温庭筠
楊柳枝 楊柳枝
館娃宮外鄴城西 館娃宮外(かんあきゅうがい) 鄴城(ぎょうじょう)の西
遠映征帆近払堤 遠く征帆(せいはん)に映じ 近く堤(つつみ)を払う
繋得王孫帰意切 王孫(おうそん) 帰意(きい)の切なるを繋ぎ得たり
不関春草緑萋萋 春草(しゅんそう)の 緑萋萋(せいせい)たるに関(かかわ)らず
⊂訳⊃
館娃宮外 鄴城の西 柳の枝は
遠くは帆に映え 近くは堤のおもてを払う
帰心の募る私を 放浪の旅に誘うのだ
故郷の野は緑色 春草が茂っていても関係はない
⊂ものがたり⊃ 詩題の「楊柳枝」(ようりゅうし)は楊柳枝詞と同題で、当時流行の詞題でした。掲詞は同題の其の五で、「館娃宮」は春秋の呉王夫差(ふさ)が寵妃西施(せいし)を住まわせた宮殿です。「鄴城」は三国魏の曹操が築いた都城で、館娃宮のあった蘇州西郊の霊厳山とは遠く離れています。温庭筠は往年の栄華の跡をふたつ並べて、そこに生えている楊柳を描くのです。
後半は楊柳にまつわる思い出。「王孫」は楚辞「招隠士」の詩句「王孫 遊んで帰らず 春草生じて萋萋たり」を踏まえています。自分を王孫(貴公子)になぞらえ、「萋萋たるに関らず」といいます。古里には春草が青々と茂っているが、そんなことにはお構いなく、楊柳が故郷を思う私の心を繋ぎとめる。つまり放浪の旅へいざなうと言うのです。
楊柳枝 楊柳枝
館娃宮外鄴城西 館娃宮外(かんあきゅうがい) 鄴城(ぎょうじょう)の西
遠映征帆近払堤 遠く征帆(せいはん)に映じ 近く堤(つつみ)を払う
繋得王孫帰意切 王孫(おうそん) 帰意(きい)の切なるを繋ぎ得たり
不関春草緑萋萋 春草(しゅんそう)の 緑萋萋(せいせい)たるに関(かかわ)らず
⊂訳⊃
館娃宮外 鄴城の西 柳の枝は
遠くは帆に映え 近くは堤のおもてを払う
帰心の募る私を 放浪の旅に誘うのだ
故郷の野は緑色 春草が茂っていても関係はない
⊂ものがたり⊃ 詩題の「楊柳枝」(ようりゅうし)は楊柳枝詞と同題で、当時流行の詞題でした。掲詞は同題の其の五で、「館娃宮」は春秋の呉王夫差(ふさ)が寵妃西施(せいし)を住まわせた宮殿です。「鄴城」は三国魏の曹操が築いた都城で、館娃宮のあった蘇州西郊の霊厳山とは遠く離れています。温庭筠は往年の栄華の跡をふたつ並べて、そこに生えている楊柳を描くのです。
後半は楊柳にまつわる思い出。「王孫」は楚辞「招隠士」の詩句「王孫 遊んで帰らず 春草生じて萋萋たり」を踏まえています。自分を王孫(貴公子)になぞらえ、「萋萋たるに関らず」といいます。古里には春草が青々と茂っているが、そんなことにはお構いなく、楊柳が故郷を思う私の心を繋ぎとめる。つまり放浪の旅へいざなうと言うのです。