Quantcast
Channel: 漢詩を楽しもう
Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

ティェンタオの自由訳漢詩 2136

$
0
0
 晩唐7ー温庭筠
     楊柳枝               楊柳枝

  館娃宮外鄴城西   館娃宮外(かんあきゅうがい)  鄴城(ぎょうじょう)の西
  遠映征帆近払堤   遠く征帆(せいはん)に映じ   近く堤(つつみ)を払う
  繋得王孫帰意切   王孫(おうそん)    帰意(きい)の切なるを繋ぎ得たり
  不関春草緑萋萋   春草(しゅんそう)の 緑萋萋(せいせい)たるに関(かかわ)らず

  ⊂訳⊃
          館娃宮外 鄴城の西  柳の枝は

          遠くは帆に映え   近くは堤のおもてを払う

          帰心の募る私を  放浪の旅に誘うのだ

          故郷の野は緑色  春草が茂っていても関係はない


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「楊柳枝」(ようりゅうし)は楊柳枝詞と同題で、当時流行の詞題でした。掲詞は同題の其の五で、「館娃宮」は春秋の呉王夫差(ふさ)が寵妃西施(せいし)を住まわせた宮殿です。「鄴城」は三国魏の曹操が築いた都城で、館娃宮のあった蘇州西郊の霊厳山とは遠く離れています。温庭筠は往年の栄華の跡をふたつ並べて、そこに生えている楊柳を描くのです。
 後半は楊柳にまつわる思い出。「王孫」は楚辞「招隠士」の詩句「王孫 遊んで帰らず 春草生じて萋萋たり」を踏まえています。自分を王孫(貴公子)になぞらえ、「萋萋たるに関らず」といいます。古里には春草が青々と茂っているが、そんなことにはお構いなく、楊柳が故郷を思う私の心を繋ぎとめる。つまり放浪の旅へいざなうと言うのです。 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>