晩唐3ー許渾
秋 思 秋 思
樹西風枕簟秋 樹(きじゅ)の西風(せいふう) 枕簟(ちんてん)の秋
楚雲湘水憶同遊 楚雲(そうん) 湘水(しょうすい) 同遊(どうゆう)を憶(おも)う
高歌一曲掩明鏡 高歌一曲(こうかいっきょく) 明鏡(めいきょう)を掩(おお)う
昨日少年今白頭 昨日(さくじつ)の少年 今 白頭(はくとう)
⊂訳⊃
庭の樹に吹く西の風 枕辺に秋がしのび寄る
楚にわく雲よ湘水よ かつての日々を想い出す
高らかに歌を詠うも 鏡の蓋は閉じておこう
昨日までの若者は いまや白髪の翁なのだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「秋思」(しゅうし)は秋の思い、初秋の感慨に人生の秋を重ねます。「樹」は崑崙山の北に生える神話の木で、ここでは樹木の美称です。「枕簟」は枕と竹で編んだ筵のことで、楚地の夏を思わせます。と同時に親しい女性との繋がりも連想させます。「湘水」は洞庭湖にそそぐ川で、「楚雲 湘水」と楚地の想い出に呼びかけます。起承の対句はみごとに決まって、名句といえるでしょう。
「同遊」は共に遊んだ昔の意味ですが、相手は女性のようです。老いて声高らかに一曲を歌いますが、かつての若者もいまは白髪頭、鏡の蓋は閉じて見ないようにしようと詠います。なお「少年」は中国では二十代のことで、十代は弱年といいます。だから「若者」と訳しました。
秋 思 秋 思
樹西風枕簟秋 樹(きじゅ)の西風(せいふう) 枕簟(ちんてん)の秋
楚雲湘水憶同遊 楚雲(そうん) 湘水(しょうすい) 同遊(どうゆう)を憶(おも)う
高歌一曲掩明鏡 高歌一曲(こうかいっきょく) 明鏡(めいきょう)を掩(おお)う
昨日少年今白頭 昨日(さくじつ)の少年 今 白頭(はくとう)
⊂訳⊃
庭の樹に吹く西の風 枕辺に秋がしのび寄る
楚にわく雲よ湘水よ かつての日々を想い出す
高らかに歌を詠うも 鏡の蓋は閉じておこう
昨日までの若者は いまや白髪の翁なのだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「秋思」(しゅうし)は秋の思い、初秋の感慨に人生の秋を重ねます。「樹」は崑崙山の北に生える神話の木で、ここでは樹木の美称です。「枕簟」は枕と竹で編んだ筵のことで、楚地の夏を思わせます。と同時に親しい女性との繋がりも連想させます。「湘水」は洞庭湖にそそぐ川で、「楚雲 湘水」と楚地の想い出に呼びかけます。起承の対句はみごとに決まって、名句といえるでしょう。
「同遊」は共に遊んだ昔の意味ですが、相手は女性のようです。老いて声高らかに一曲を歌いますが、かつての若者もいまは白髪頭、鏡の蓋は閉じて見ないようにしようと詠います。なお「少年」は中国では二十代のことで、十代は弱年といいます。だから「若者」と訳しました。