中唐119ー劉禹錫
金陵懐古 金陵懐古
潮満冶城渚 潮(しお)は冶城(やじょう)の渚(なぎさ)に満ち
日斜征虜亭 日(ひ)は征虜亭(せいりょてい)に斜めなり
蔡洲新草緑 蔡洲(さいしゅう)の新草(しんそう)は緑にして
幕府旧烟青 幕府(ばくふ)の旧烟(きゅうえん)は青し
興廃由人事 興廃(こうはい)は人事(じんじ)に由(よ)り
山川空地形 山川(さんせん)は地形に空(むな)し
後庭花一曲 後庭花(こうていか)の一曲
幽怨不堪聴 幽怨(ゆうえん) 聴くに堪(た)えず
⊂訳⊃
江水は 金陵城の渚に満ち
夕陽は 征虜亭を斜めに照らす
蔡洲の草は 新緑に映え
幕府山に 霞は青く立ちこめる
世の興亡は 人によって起こり
地形は勝れていても 山川はむなしい
玉樹後庭花の一曲には
聴くに堪えない怨みがある
⊂ものがたり⊃ 詩題の「金陵」(きんりょう)は南朝の都建康の雅称です。詩は前後二段に分かれ、前半四句で金陵城を懐古します。「冶城」は三国呉の金陵城にあった武器廠のことですが、ここでは城そのものを指しています。「征虜亭」は玄武湖の北にあり、征虜将軍謝石(しゃせき)の客舎のことです。
「蔡洲」は蘇峻(そしゅん)の乱を鎮圧するために東晋の水軍が終結したところ。「幕府」は山の名で、王導(おうどう)が幕府をひらき軍隊を駐屯させた山といいます。以上はいずれも六朝時代の金陵の史跡で、歴史を知る者の心に懐旧の情を起こさせます。
後半は作者の感懐です。王朝の興亡は人によって決まり、地勢の利は何の役にも立たないと詠います。「後庭花」は南朝陳の後主陳叔宝(ちんしゅくほう)がつくった詩「玉樹後庭花」のことで、亡国の歌として有名でした。「幽怨」は胸中の怨み、玉樹後庭花には聴くに堪えない怨みがこもっていると詠うのです。
金陵懐古 金陵懐古
潮満冶城渚 潮(しお)は冶城(やじょう)の渚(なぎさ)に満ち
日斜征虜亭 日(ひ)は征虜亭(せいりょてい)に斜めなり
蔡洲新草緑 蔡洲(さいしゅう)の新草(しんそう)は緑にして
幕府旧烟青 幕府(ばくふ)の旧烟(きゅうえん)は青し
興廃由人事 興廃(こうはい)は人事(じんじ)に由(よ)り
山川空地形 山川(さんせん)は地形に空(むな)し
後庭花一曲 後庭花(こうていか)の一曲
幽怨不堪聴 幽怨(ゆうえん) 聴くに堪(た)えず
⊂訳⊃
江水は 金陵城の渚に満ち
夕陽は 征虜亭を斜めに照らす
蔡洲の草は 新緑に映え
幕府山に 霞は青く立ちこめる
世の興亡は 人によって起こり
地形は勝れていても 山川はむなしい
玉樹後庭花の一曲には
聴くに堪えない怨みがある
⊂ものがたり⊃ 詩題の「金陵」(きんりょう)は南朝の都建康の雅称です。詩は前後二段に分かれ、前半四句で金陵城を懐古します。「冶城」は三国呉の金陵城にあった武器廠のことですが、ここでは城そのものを指しています。「征虜亭」は玄武湖の北にあり、征虜将軍謝石(しゃせき)の客舎のことです。
「蔡洲」は蘇峻(そしゅん)の乱を鎮圧するために東晋の水軍が終結したところ。「幕府」は山の名で、王導(おうどう)が幕府をひらき軍隊を駐屯させた山といいます。以上はいずれも六朝時代の金陵の史跡で、歴史を知る者の心に懐旧の情を起こさせます。
後半は作者の感懐です。王朝の興亡は人によって決まり、地勢の利は何の役にも立たないと詠います。「後庭花」は南朝陳の後主陳叔宝(ちんしゅくほう)がつくった詩「玉樹後庭花」のことで、亡国の歌として有名でした。「幽怨」は胸中の怨み、玉樹後庭花には聴くに堪えない怨みがこもっていると詠うのです。