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ティェンタオの自由訳漢詩 2119

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 中唐116ー劉禹錫
   蜀先主廟           蜀先主の廟

  天下英雄気     天下(てんか)   英雄の気(き)
  千秋尚凛然     千秋(せんしゅう) 尚(な)お凛然(りんぜん)
  勢分三足鼎     勢(せい)は三足(さんそく)の鼎(てい)を分かち
  業復五銖銭     業(ぎょう)は五銖銭(ごしゅせん)を復(おこ)す
  得相能開国     相(しょう)を得ては能(よ)く国を開き
  生児不象賢     児(じ)を生んでは象賢(しょうけん)ならず
  凄涼蜀故妓     凄涼(せいりょう)たり  蜀(しょく)の故妓(こぎ)
  来舞魏官前     来たりて舞う  魏官(ぎかん)の前

  ⊂訳⊃
          天下  英雄の気概は
          千年  厳としてこの世にある
          勢いは分立して  鼎の三足の一となり
          鴻業は漢の血筋を再興する
          名宰相を得て国を開いたが
          後継ぎは不肖の子であった
          蜀の妓女が  魏官の前で舞うのをみて
          蜀の旧臣は  粛として頭を垂れる


 ⊂ものがたり⊃ 元和十五年(820)に憲宗が崩じて穆宗が即位すると、翌長慶元年(821)三月、王叔文一派への恩赦がくだります。劉禹錫は夔州(きしゅう:四川省奉節県)の刺史に移され、ついで敬宗の宝暦元年(825)春、和州(安徽省和県)刺史に転じます。都に復帰するのは文宗の太和二年(828)になってからです。
 詩題の「蜀先主(しょくせんしゅ)の廟」は夔州にあった蜀漢の先主劉備(りゅうび)の廟で、夔州刺史になったときの作とされています。「凛然」は厳粛なさまで、まず英雄の気概が厳然と存在すると詠います。
 中四句は蜀漢の興亡を述べるもので、「三足の鼎」は三国時代に魏・蜀・呉が鼎立し、劉備が蜀を興しました。「五銖銭」は漢の武帝の通貨で、漢の復興を喩えます。「相」は諸葛孔明、「児」は後主劉禅のことで、劉禅は魏に降伏して魏都洛陽に連行されました。
 蜀の妓女が魏の宴会の席で舞うのをみて、劉禅とともに魏に連行された蜀臣たちは「凄涼」(もの寂しいさま)として頭を垂れましたが、劉禅は笑っていたと伝えられます。

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