中唐106ー薛濤
送友人 友人を送る
水国蒹葭夜有霜 水国(すいこく)の蒹葭(けんか) 夜 霜(しも)有り
月寒山色共蒼蒼 月(つき)寒く 山色(さんしょく) 共に蒼蒼(そうそう)たり
誰言千里自今夕 誰か言う 千里 今夕(こんせき)よりし
離夢杳如関塞長 離夢(りむ) 杳如(ようじょ)として関塞(かんさい)長し
⊂訳⊃
水郷の秋の夜 岸辺の葦に霜がおり
空に寒月 山々は蒼く静まりかえる
今夜かぎりで 千里のかなたに離れても
憶いはきっと夢のなか 国境までも届きます
⊂ものがたり⊃ 詩題の「友人」は男性で、秋の夕暮れ、遠くに旅立つ恋人を渡津で見送る詩です。前半二句は『詩経』秦風「蒹葭」の冒頭の句「蒹葭 蒼蒼たり 白露(はくろ) 霜と為(な)る」を踏まえています。「水国」は水郷のことで、成都の近郊をいうのでしょう。月に照らされて山々は蒼く静まりかえっています。
「誰か言う」は後半全体にかかり、人は言うけれど私は信じない、という問いかけの否定です。直訳すれば、今夜限りで千里のかなたに離ればなれになってしまえば、夢のなかで想っても遠い「関塞」(国境の砦)までは届かないと人は言うけれど、私は信じませんになります。
送友人 友人を送る
水国蒹葭夜有霜 水国(すいこく)の蒹葭(けんか) 夜 霜(しも)有り
月寒山色共蒼蒼 月(つき)寒く 山色(さんしょく) 共に蒼蒼(そうそう)たり
誰言千里自今夕 誰か言う 千里 今夕(こんせき)よりし
離夢杳如関塞長 離夢(りむ) 杳如(ようじょ)として関塞(かんさい)長し
⊂訳⊃
水郷の秋の夜 岸辺の葦に霜がおり
空に寒月 山々は蒼く静まりかえる
今夜かぎりで 千里のかなたに離れても
憶いはきっと夢のなか 国境までも届きます
⊂ものがたり⊃ 詩題の「友人」は男性で、秋の夕暮れ、遠くに旅立つ恋人を渡津で見送る詩です。前半二句は『詩経』秦風「蒹葭」の冒頭の句「蒹葭 蒼蒼たり 白露(はくろ) 霜と為(な)る」を踏まえています。「水国」は水郷のことで、成都の近郊をいうのでしょう。月に照らされて山々は蒼く静まりかえっています。
「誰か言う」は後半全体にかかり、人は言うけれど私は信じない、という問いかけの否定です。直訳すれば、今夜限りで千里のかなたに離ればなれになってしまえば、夢のなかで想っても遠い「関塞」(国境の砦)までは届かないと人は言うけれど、私は信じませんになります。