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ティェンタオの自由訳漢詩 2106

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 中唐103ー元稹
    聞楽天授             楽天の江州司馬を
    江州司馬             授けらるるを聞く

  残燈無焔影幢幢   残燈(ざんとう)  焔(ほのお)無くして影(かげ)幢幢(とうとう)
  此夕聞君謫九江   此の夕(ゆうべ)  君が九江(きゅうこう)に謫(たく)せらるるを聞く
  垂死病中驚坐起   垂死(すいし)の病中  驚いて坐起(ざき)すれば
  暗風吹雨入寒窓   暗風(あんぷう)  雨を吹いて寒窓(かんそう)に入る

  ⊂訳⊃
          灯も消えかけ  影はゆらゆらと揺れている

          そんな夜中に  君の江州流謫を聞く

          重い病の身を  驚いて坐り直すと

          寂しい窓から  雨まじりの風が吹いて来た


 ⊂ものがたり⊃ 元和四年(809)に元稹は監察御史になっていましたが、その年の秋、洛陽でひとりの学生が自殺しました。この自殺に関して河南府の尹(長官)の過剰な問責が原因とする見解があり、調べに当たった元稹は府尹の罷免を上申しました。しかし、このことは監察御史としては越権行為であり、事実を調べて報告するだけでよかったのです。
 府尹の訴えによって元稹は長安に呼びもどされ、ただちに江陵府の士曹参軍に貶謫になりました。五年間の江陵(湖北省江陵県)勤務のあと、元和十年(815)正月に都に呼びもどされましたが、三月二十五日に通州(四川省達県)司馬に再貶となりました。柳宗元・劉禹錫ら五司馬の再貶とおなじ時期です。
 元稹が通州司馬に貶された直後の十年六月、こんどは白居易が越権の罪に問われて江州(江西省九江市)司馬に流されました。その報せを通州で聞いたとき、元稹は瘧(マラリア)に侵されて重病の床に臥していました。
 「幢幢」はゆらゆらと揺れ動くさまで、幢は旗の一種です。報せを聞いて元稹は寝床の上にがばと起き上がり、坐り直したのでしょう。悲報に胸を打たれるようすが、残・無・影・死・暗・風・雨・寒と暗いイメージの語を多用した詩句で描かれています。

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