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ティェンタオの自由訳漢詩 2105

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 中唐102ー元稹
   遺悲懐三首 其二      悲懐を遺る 三首 其の二

  昔日戲言身後意   昔日(せきじつ)  戲(たわむ)れに  身後(しんご)の意(い)を言いしが
  今朝皆到眼前来   今朝(こんちょう)  皆  眼前(がんぜん)に到り来たる
  衣裳已施行看尽   衣裳(いしょう)は已(すで)に施して  行々(ゆくゆく)尽くるを看(み)んも
  針線猶存未忍開   針線(しんせん)は猶(な)お存して   未(いま)だ開くに忍びず
  尚想旧情憐婢僕   尚(な)お旧情(きゅうじょう)を想って婢僕(ひぼく)を憐れみ
  也曾因夢送銭財   也(ま)た曾(かつ)て夢に因(よ)って銭財(せんざい)を送る
  誠知此恨人人有   誠(まこと)に知る  此の恨(うら)み人人(にんにん)に有り
  貧賤夫妻百事哀   貧賤(ひんせん)の夫妻は百事(ひゃくじ)哀し

  ⊂訳⊃
          むかし冗談に  死んだあとのことなど語り合ったが
          今朝はそれが  目の前に押し寄せる
          お前の衣裳は分けてやり  やがてなくなるだろう
          針や糸がそのままなのは  箱を開けるのがつらいからだ
          優しかった心根を汲んで  召使いたちに憐れみをかけ
          夢にお前が描いたように  金品などを分けてやる
          諦め切れない悲しみは   この世の常とわかっているが
          貧しく暮らした夫婦には   すべてが哀しい思い出である


 ⊂ものがたり⊃ 其の二の詩は生前の妻が慈悲深い女性であったことを偲び、貧乏のために思うような生活をさせてやれなかったことを嘆きます。
 「身後」は死後のことで、どちらかが先に死んだとき、死に遅れた者はどんな気持ちだろうと話し合ったことがありました。若い二人であるので、愛情を確認し合うような気持ちで話し合ったのでしょう。そんな思い出が現実のこととして目の前に押し寄せてきます。
 中四句二組の対句では、妻の遺品や形見分けなどを通じて死んだ妻を懐かしみます。「旧情」は生前の妻の気持ち、「曾夢」はかねての妻の夢、願いでしょう。「婢僕」(男女の召使い)にも慈しみの心を持っていた妻の気持ちを汲んで、召使いたちにも金品を分けてやったと詠います。
 尾聯の「人人」はひとびとというのに等しく、妻を亡くした悲しみはこの世の常であるけれど、貧しい夫婦の場合にはあらゆることが哀しみの種になると、若くして逝った妻を悼みます。

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