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ティェンタオの自由訳漢詩 2095

 中唐92ー柳宗元
   登柳州城楼寄          柳州の城楼に登り
   漳汀封連四州          漳汀封連四州に寄す

  城上高楼接大荒   城上(じょうじょう)の高楼は大荒(だいこう)に接す
  海天愁思正茫茫   海天(かいてん)の愁思(しゅうし)  正(まさ)に茫茫(ぼうぼう)
  驚風乱颭芙蓉水   驚風(けいふう)  乱れて颭(ゆる)がす芙蓉(ふよう)の水
  密雨斜侵薜荔牆   密雨(みつうん)  斜めに侵(おか)す薜荔(へいれい)の牆(かき)
  嶺樹重遮千里目   嶺樹(れいじゅ)  重なって遮(さえ)ぎる千里の目
  江流曲似九回腸   江流(こうりゅう) 曲りて九回の腸(ちょう)に似たり
  共来百越文身地   共に百越文身(ひゃくえつぶんしん)の地に来たりて
  猶自音書滞一郷   猶(な)お自(おのず)から音書(たより)は一郷(いっきょう)に滞(とどこお)る

  ⊂訳⊃
          城壁の楼は  世界の果ての地に臨み
          広大な空に  果てしなく愁いは拡がる
          突風が     蓮の花咲く水面をゆすり
          篠突く雨は  蔓に被われた壁面に斜めに注ぐ
          山の木々は  重なり合って視界をさえぎり
          川の流れは  くねくねと腸のように曲がっている
          ともに     百越文身の地にやって来ながら
          音信は絶え  ひとつの所に漂っているのか


 ⊂ものがたり⊃ 元和十年(815)六月、柳宗元は柳州(りゅうしゅう)に到着します。妻子のほか従弟の柳宗直と柳宗一を伴なっていましたが、翌七月、柳宗直が亡くなりました。永州でも生活を共にした従弟の死は、片腕を捥ぎ取られたような打撃でした。一方、永州で娶った後妻がこの年、次女を生んでいます。北還南逐の間にも家族は形成されてゆきます。
 柳州は永州よりも南、五嶺を越えた南蛮の地です。刺史であり、司馬のような冗官(じょうかん)ではありませんが、僻遠の地に再貶された柳宗元ははじめのころ心穏やかではありませんでした。
 詩題の「漳汀封連四州」は漳州・汀州・封州・連州のことで共に辺境州の刺史になった四人に送った詩です。中国では都から遠く隔たった地を荒服(こうふく)といい、「大荒」は世界の果てを意味します。柳宗元は僻遠の地に来たことを悲しみ、つづく四句であたりの情景を描きます。
 目に映る山川はあらあらしく、作者の悲痛な心境を反映しているようです。「百越文身の地」は風俗の異なる異民族の地ということで、このような地に来たというのに互に便りも交わさず、ひとつところに閉じこもっているのかとかつての同志にむかって歎くのでした。 

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