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ティェンタオの自由訳漢詩 2091

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 中唐88ー柳宗元
    汨羅遇風            汨羅にて風に遇う

  南来不作楚臣悲   南来(なんらい)  楚臣(そしん)の悲しみを作(な)さず
  重入脩門自有期   重ねて脩門(しゅうもん)に入る  自(おのず)から期(き)する有り
  為報春風汨羅道   為(ため)に報ず  春風(しゅんぷう)  汨羅(べきら)の道
  莫将波浪枉明時   波浪(はろう)を将(も)って明時(めいじ)を枉(うら)む莫(なか)れ

  ⊂訳⊃
          南に来たが  屈原の悲しみを抱くに至らず

          生きて再び  都の門に入る日が待っている

          汨羅のほとりで私はいう  春風よ  波を起こして

          聖明の世に  屈原の怨みを蘇らせたりはしないでくれ


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「汨羅」は戦国楚の屈原が身を投じた川で、洞庭湖の東南部で湖にそそぎます。当時の長途の旅は水路でたどれるところは舟を用いるのが普通でしたので、洞庭湖から汨羅水を少し遡って汨羅の淵(湖南省湘陰県の東北)を訪れたのでしょう。
 屈原は国に怨みを抱いて自殺したが、自分は逆境を抜け出すことができたと詠います。「脩門」は戦国楚の都郢(えい)の城門の名で、自分はふたたび唐都長安の門をくぐることができると帰京への期待を詠います。
 そして春風に、国を怨んで死んだ屈原の気持ちを、この「明時」(聖明の世)に蘇らせるようなことはしないでくれと呼びかけます。この呼びかけは、永州の自己への鎮魂歌ともいえるでしょう。

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