中唐82ー柳宗元
秋暁行南谷 秋の暁に南谷を
径荒村 行き荒村を径
杪秋霜露重 杪秋(びょうしゅう) 霜露(そうろ)重し
晨起行幽谷 晨(あした)に起きて幽谷(ゆうこく)を行く
黄葉覆渓橋 黄葉(きば)は渓橋(けいきょう)を覆い
荒村唯古木 荒村(こうそん)には唯(た)だ古木あるのみ
寒花疏寂歴 寒花(かんか)は疏(まば)らにして寂歴(せきれき)たり
幽泉微断続 幽泉(ゆうせん)は微(かす)かにして断続す
機心久已忘 機心(きしん) 久しく已(すで)に忘る
何事驚麋鹿 何事(なにごと)ぞ 麋鹿(びろく)を驚かしむるとは
⊂訳⊃
秋も末になり 霜と露は重たく降り
朝早く起きて 深い谷間を行く
谷川の橋を 黄色くなった葉が覆い
荒れた村には 古びた木があるだけだ
寒中に咲く花は まばらで寂しく
泉の水は 微かな音を立てて流れる
官途への思いは とっくに忘れてしまったのに
どうしたことか 鹿をびっくりさせるとは
⊂ものがたり⊃ 詩題に「南谷」(なんこく)とあり、詩中に「幽谷」とありますので、「南澗中題」と同じころの作と思われます。「杪秋」の杪は梢の意味で、晩秋を意味します。中四句では幽谷のもの寂しい情景が描かれます。
そして結びの二句で、「機心」(名利を求める心)はすでに忘れてしまっているのに、どうして私は「麋鹿」(なれ鹿と鹿)を驚かせるのかと、無心の境地に安心立命(あんじんりゅうめい)できない自分を反省するのです。
秋暁行南谷 秋の暁に南谷を
径荒村 行き荒村を径
杪秋霜露重 杪秋(びょうしゅう) 霜露(そうろ)重し
晨起行幽谷 晨(あした)に起きて幽谷(ゆうこく)を行く
黄葉覆渓橋 黄葉(きば)は渓橋(けいきょう)を覆い
荒村唯古木 荒村(こうそん)には唯(た)だ古木あるのみ
寒花疏寂歴 寒花(かんか)は疏(まば)らにして寂歴(せきれき)たり
幽泉微断続 幽泉(ゆうせん)は微(かす)かにして断続す
機心久已忘 機心(きしん) 久しく已(すで)に忘る
何事驚麋鹿 何事(なにごと)ぞ 麋鹿(びろく)を驚かしむるとは
⊂訳⊃
秋も末になり 霜と露は重たく降り
朝早く起きて 深い谷間を行く
谷川の橋を 黄色くなった葉が覆い
荒れた村には 古びた木があるだけだ
寒中に咲く花は まばらで寂しく
泉の水は 微かな音を立てて流れる
官途への思いは とっくに忘れてしまったのに
どうしたことか 鹿をびっくりさせるとは
⊂ものがたり⊃ 詩題に「南谷」(なんこく)とあり、詩中に「幽谷」とありますので、「南澗中題」と同じころの作と思われます。「杪秋」の杪は梢の意味で、晩秋を意味します。中四句では幽谷のもの寂しい情景が描かれます。
そして結びの二句で、「機心」(名利を求める心)はすでに忘れてしまっているのに、どうして私は「麋鹿」(なれ鹿と鹿)を驚かせるのかと、無心の境地に安心立命(あんじんりゅうめい)できない自分を反省するのです。