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ティェンタオの自由訳漢詩 2085

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 中唐82ー柳宗元
   秋暁行南谷         秋の暁に南谷を
   径荒村            行き荒村を径

  杪秋霜露重     杪秋(びょうしゅう)  霜露(そうろ)重し
  晨起行幽谷     晨(あした)に起きて幽谷(ゆうこく)を行く
  黄葉覆渓橋     黄葉(きば)は渓橋(けいきょう)を覆い
  荒村唯古木     荒村(こうそん)には唯(た)だ古木あるのみ
  寒花疏寂歴     寒花(かんか)は疏(まば)らにして寂歴(せきれき)たり
  幽泉微断続     幽泉(ゆうせん)は微(かす)かにして断続す
  機心久已忘     機心(きしん)    久しく已(すで)に忘る
  何事驚麋鹿     何事(なにごと)ぞ  麋鹿(びろく)を驚かしむるとは

  ⊂訳⊃
          秋も末になり   霜と露は重たく降り
          朝早く起きて   深い谷間を行く
          谷川の橋を   黄色くなった葉が覆い
          荒れた村には  古びた木があるだけだ
          寒中に咲く花は  まばらで寂しく
          泉の水は      微かな音を立てて流れる
          官途への思いは  とっくに忘れてしまったのに
          どうしたことか   鹿をびっくりさせるとは


 ⊂ものがたり⊃ 詩題に「南谷」(なんこく)とあり、詩中に「幽谷」とありますので、「南澗中題」と同じころの作と思われます。「杪秋」の杪は梢の意味で、晩秋を意味します。中四句では幽谷のもの寂しい情景が描かれます。
 そして結びの二句で、「機心」(名利を求める心)はすでに忘れてしまっているのに、どうして私は「麋鹿」(なれ鹿と鹿)を驚かせるのかと、無心の境地に安心立命(あんじんりゅうめい)できない自分を反省するのです。

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