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ティェンタオの自由訳漢詩 2083

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 中唐80ー柳宗元
   南澗中題           南澗中に題す          (前半十句)

  秋気集南澗     秋気(しゅうき)  南澗(なんかん)に集まる
  独遊亭午時     独り遊ぶ     亭午(ていご)の時
  迴風一蕭瑟     迴風(かいふう)  一(いつ)に蕭瑟(しょうしつ)
  林影久参差     林影(りんえい)  久しく参差(さんし)
  始至若有得     始めて至りて得ること有るが若(ごと)し
  稍深遂忘疲     稍(や)や深くして遂(つい)に疲れを忘る
  羇禽響幽谷     羇禽(ききん)   幽谷(ゆうこく)に響き
  寒藻舞淪漪     寒藻(かんそう) 淪漪(りんい)に舞う
  去国魂已游     国(くに)を去りて  魂  已(すで)に游び
  懐人涙空垂     人を懐(おも)いて  涙  空しく垂(た)る

  ⊂訳⊃
          秋の気が   南の谷川に集まるとき
          ま昼間に   ひとりで散歩する
          つむじ風は  淋しげに吹き
          林の木々は  入り乱れていつまでも揺れる
          ここに来たとき  心に触れるものがあった
          奥にゆくにつれ  疲れを忘れる
          渡り鳥の声が   静かな谷間にひびき
          渓流の水草が  さざ波に揺れている
          都を去って  魂は肉体から離れ
          人恋しくて  むなしい涙を流す


 ⊂ものがたり⊃ 元和七年(812)の秋、「永州八記」に代表される山水記を書きながら、柳宗元の孤独は深まっていきます。その孤独、寂寞を乗り越えようとして詩が書かれます。詩題の「南澗」は南の谷川で、愚丘の南、愚渓のことでしょう。
 秋の正午、淋しく澄み切った流れのあたり、つむじ風の吹くなかを歩いてゆきます。柳宗元はその山水を「始めて至りて得ること有るが若し」「遂に疲れを忘る」と肯定的に捉えようとします。だが、心はすぐに反転し、「国を去りて 魂 已に游び 人を懐いて 涙 空しく垂る」と詠うのです。

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