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ティェンタオの自由訳漢詩 2082

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 中唐79ー柳宗元
   南中栄橘柚          南中に橘柚栄ゆ

  橘柚懐貞質     橘柚(きつゆう)は貞質(ていしつ)を懐(いだ)き
  受命此炎方     命(いのち)を此の炎方(えんぽう)に受(さず)かる
  密林耀朱緑     密林(みつりん)に朱緑(しゅりょく)を耀(かがや)かし
  晩歳有余芳     晩歳(ばんさい)に余芳(よほう)有り
  殊風限清漢     殊風(しゅふう)は清漢(せいかん)に限られ
  飛雪滞故郷     飛雪(ひせつ)は故郷に滞(とどこお)る
  攀条何所歎     条(えだ)に攀(よじ)りて何の歎く所(ところ)ぞ
  北望熊与湘     北のかた熊(ゆう)と湘(しょう)とを望む

  ⊂訳⊃
          柑橘は  変わることのない操を抱いて
          炎熱の地に   命をさずかる
          森のなかに   朱い実と緑の葉を耀かせ
          熟するころに  有り余る香りをただよわす
          異俗の風が   銀河の輝きを曇らせ
          飛びかう雪は  故郷にとどまっている
          枝にすがって  何を歎くのか
          北の方  熊山と湘山を眺める


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「橘柚」(みかんの類)は南国の特産です。柳宗元は「炎方」(炎熱の地)に流された自分を特産の橘柚に喩えます。中国の華北は疎林が多く、「森」は厳かの意味に用います。「密林」は林の密なところで、和語の森にあたるでしょう。
 橘柚は森のなかにたわわに実っていると言いながら、詩は後半四句の歎きになります。「清漢」は天の河のことで、南の風が天の河の輝きを曇らせ、雪は北の故郷にとどまって南までは降ってきません。
 「条に攀りて何の歎く所ぞ」は鈴なりの橘柚をわが身に喩えるもので、豊かに実った自分は枝にすがりついて北の方、熊山と湘山を望むだけだと歎きます。異俗のなかで朽ちていく自分に我慢できず、恨みと切なさを胸に抱きながら長安の方を見詰め、空しさを噛みしめるのです。

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