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ティェンタオの自由訳漢詩 2076

 中唐73ー柳宗元
   湘口館瀟湘          湘口館は瀟湘二水
   二水所会            の会する所          (後半八句)

  杳杳漁夫吟     杳杳(ようよう)として漁夫(ぎょふ)吟じ
  叫叫羇鴻哀     叫叫(きょうきょう)として羇鴻(きこう)哀しむ
  境勝豈不豫     境(きょう)の勝(すぐ)れたる  豈(あ)に豫(よろこ)ばざらんや
  慮分固難裁     慮(おも)い分かれて固(まこと)に裁(さば)き難し
  升高欲自舒     高きに升(のぼ)りて自ら舒(の)べんと欲するも
  彌使遠念来     彌々(いよいよ)遠き念(おも)いをして来たらしむ
  帰流駚且広     帰る流れは駚(はや)くして且(か)つ広し
  汎舟絶沿     舟を汎(う)かべて沿(えんかい)を絶(た)つ

  ⊂訳⊃
          はるか彼方から  漁夫の歌声が聞こえ
          飛びゆく雁は    哀しげな声で鳴く
          この勝れた光景  どうして楽しむことができないのか
          思いは乱れて   どうすることもできない
          高い所に登って  心をのびやかにしようと思うが
          僻遠の地の思い  悲しみは募るばかりだ
          逝く川の流れは  速くてかつ広い
          舟を浮かべて   行き来するのはやめにしよう


 ⊂ものがたり⊃ 後半八句のはじめ四句で、「漁夫」の歌声と「羇鴻」の鳴き声が聞こえて柳宗元の心は一変し、思いは乱れて美しい景色を楽しむことができなくなります。この日は九月九日、重陽節の日で、高い所に上って晴れやかな気分になろうと思っていましたが、またも僻遠の地にあることの悲しみが湧き起こり、遊覧をやめて帰ろうと思うのです。
 結びの「舟を汎かべて沿を絶つ」は謝霊雲の「始寧の墅を過る」(平成25.10.15ー17のブログ参照)に「水渉しては(のぼ)り沿(くだ)りを尽くす」とあり、柳宗元はその句を「絶沿」(沿を絶つ)と逆転させています。謝霊雲のように山水の美によって鬱屈した心を晴らそうとしますが、そうはならず、かえって苦しみは増してしまうと詠うのです。 

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