中唐72ー柳宗元
湘口館瀟湘 湘口館は瀟湘二水
二水所会 の会する所 (前半十句)
九嶷濬傾奔 九嶷(きゅうぎ) 傾奔(けいほん)を濬(ふか)くし
臨源委縈迴 臨源(りんげん) 縈迴(えいかい)するに委(まか)す
会合属空曠 会合(かいごう) 空曠(くうこう)に属(つら)なり
泓澄停風雷 泓(きよ)く澄みて風雷(ふうらい)を停(とど)む
高館軒霞表 高き館(かん)は霞表(かひょう)に軒(あが)り
危楼臨山隈 危(たか)き楼(ろう)は山隈(さんわい)に臨めり
玆辰始澂霽 玆(こ)の辰(とき) 始めて澂(きよ)らかに霽(は)れ
纎雲尽褰開 纎(ほそ)き雲 尽(ことごと)くに褰(かか)げ開く
天秋日正中 天(そら)秋にして日(ひ)正(まさ)に中(みなみ)し
水碧無塵埃 水(かわ)碧(あお)くして塵埃(じんあい)無し
⊂訳⊃
九嶷山の麓に 逆巻く流れは深く
臨源山の麓を 川はめぐって流れている
川の合する所 広々として何事もなく
清らかに澄み 嵐もここにはやってこない
高い館は 霞の上に屋根を突き出し
高楼は 山の隈に臨んで立っている
このとき 空はようやく晴れわたり
細い雲は すべて左右に開かれる
秋たけなわの空 陽は真南にあり
川は青々として 塵ひとつ浮かんでいない
⊂ものがたり⊃ 元和四年(809)に、柳宗元は軟禁を解かれ、自由に城外に出ることができるようになりました。その年の重陽節の日に舟で瀟水をくだり、瀟水が湘水と合流する地を訪れて一詩を賦しました。
詩題の「湘口館」(しょうこうかん)は「瀟湘」(しょうしょう)の合流する地点にありました。瀟水は永州城の西壁に沿って北へ流れ、城の北郊で湘水に合流して洞庭湖へむかいます。前半十句のはじめ四句は瀟水の聖なる流れを描き、合流地点に視線を集中させます。
「泓く澄みて風雷を停む」という表現には、禁足を解かれた安堵の思い、もしくは都の政争から遠く離れていることへの感懐がこめられているでしょう。つぎの六句では合流地点の美を詠いあげます。湘口館の楼閣が雲間にそびえ、おりよく空も晴れて川の流れは清らかです。
湘口館瀟湘 湘口館は瀟湘二水
二水所会 の会する所 (前半十句)
九嶷濬傾奔 九嶷(きゅうぎ) 傾奔(けいほん)を濬(ふか)くし
臨源委縈迴 臨源(りんげん) 縈迴(えいかい)するに委(まか)す
会合属空曠 会合(かいごう) 空曠(くうこう)に属(つら)なり
泓澄停風雷 泓(きよ)く澄みて風雷(ふうらい)を停(とど)む
高館軒霞表 高き館(かん)は霞表(かひょう)に軒(あが)り
危楼臨山隈 危(たか)き楼(ろう)は山隈(さんわい)に臨めり
玆辰始澂霽 玆(こ)の辰(とき) 始めて澂(きよ)らかに霽(は)れ
纎雲尽褰開 纎(ほそ)き雲 尽(ことごと)くに褰(かか)げ開く
天秋日正中 天(そら)秋にして日(ひ)正(まさ)に中(みなみ)し
水碧無塵埃 水(かわ)碧(あお)くして塵埃(じんあい)無し
⊂訳⊃
九嶷山の麓に 逆巻く流れは深く
臨源山の麓を 川はめぐって流れている
川の合する所 広々として何事もなく
清らかに澄み 嵐もここにはやってこない
高い館は 霞の上に屋根を突き出し
高楼は 山の隈に臨んで立っている
このとき 空はようやく晴れわたり
細い雲は すべて左右に開かれる
秋たけなわの空 陽は真南にあり
川は青々として 塵ひとつ浮かんでいない
⊂ものがたり⊃ 元和四年(809)に、柳宗元は軟禁を解かれ、自由に城外に出ることができるようになりました。その年の重陽節の日に舟で瀟水をくだり、瀟水が湘水と合流する地を訪れて一詩を賦しました。
詩題の「湘口館」(しょうこうかん)は「瀟湘」(しょうしょう)の合流する地点にありました。瀟水は永州城の西壁に沿って北へ流れ、城の北郊で湘水に合流して洞庭湖へむかいます。前半十句のはじめ四句は瀟水の聖なる流れを描き、合流地点に視線を集中させます。
「泓く澄みて風雷を停む」という表現には、禁足を解かれた安堵の思い、もしくは都の政争から遠く離れていることへの感懐がこめられているでしょう。つぎの六句では合流地点の美を詠いあげます。湘口館の楼閣が雲間にそびえ、おりよく空も晴れて川の流れは清らかです。