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ティェンタオの自由訳漢詩 2073

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 中唐70ー柳宗元
   自衡陽移桂十余本      衡陽より桂十余本を移し
   植零陵所住精舎        零陵の住む所の精舎に植う     (前半十句)

  謫官去南裔     官(かん)を謫(たく)せられて南裔(なんえい)に去り
  清湘繞霊岳     清湘(せいしょう)  霊岳(れいがく)を繞(めぐ)る
  晨登蒹葭岸     晨(あした)に登る  蒹葭(けんか)の岸
  霜景霽紛濁     霜景(そうけい)   紛(ふん)として濁れるを霽(は)らす
  離披得幽桂     離披(りひ)として幽桂(ゆうけい)を得たり
  芳本欣盈握     芳本(ほうほん)  握(てのうち)に盈(み)つることを欣(よろこ)ぶ
  火耕困煙燼     火耕(かこう)   煙燼(えんじん)に困しむ
  薪採久摧剥     薪採(しんさい)  久しく摧剥(さいはく)す
  道旁且不願     道旁(どうぼう)  且(か)つ願(ねが)わず
  岑嶺況悠邈     岑嶺(しんれい)  況(いわ)んや悠邈(ゆうばく)なるおや

  ⊂訳⊃
          左遷されて南方にやって来た
          清らかな湘水は  衡山をめぐって流れる
          明け方に  蒹や葭の茂る岸辺に上ると
          霜が降り  暗く濁っていた景色は晴れわたる
          ひっそり生えている木犀をみつけたが
          根元が手で握れるほど細いのが嬉しい
          焼き畑の煙に苦しみ
          薪として伐られ  捥ぎ取られてきた
          道端に生えていても  かえりみる者はなく
          人里離れた山の上に生えていればなおさらだ


 ⊂ものがたり⊃ 柳宗元の山水への愛は、草木を育てることへの愛につながります。貶謫の期間を通じて花木を植える詩が多数残されており、植樹は貶謫の苦悩と悲哀を慰めるよすがになりました。詩は元和三年(808)の秋(もしくは初冬)に、衡州(湖南省衡陽市)から桂の幼木十余本を永州に持ち帰り、法華寺の境内に植えたときの感懐です。
 詩題の「衡陽」は衡州の州治のある県で、「霊陵」(永州の州治のある県)の東北24㌔㍍のところにあります。湘水の下流にあたり、北に衡山を望んでいます。柳宗元は貶謫のはじめ軟禁状態にあったので、元和三年に衡陽へ行ったとすれば自由な旅ではなかったでしょう。
 前半十句のはじめ四句は序の部分です。湘水が「霊岳」(衡山)の麓をめぐって流れ、早朝、蒹(おぎ)と葭(よし)の茂る川岸に上りました。つぎの六句は「桂」(木犀)の幼木をみつけたくだりで、柳宗元はかえりみる者もいない木犀の苦難の来し方に思いをめぐらして同情します。この部分は官途の途中で貶謫の憂き目にあった自分を暗喩するものでしょう。  

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