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ティェンタオの自由訳漢詩 2071

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 中唐68ー柳宗元
   構法華寺西亭        法華寺に西亭を構う         (中十句)

  遠岫攢衆頂     遠岫(えんしゅう)  衆頂(しゅうちょう)を攢(あつ)め
  澄江抱清湾     澄江(ちょうこう)  清湾(せいわん)を抱(いだ)く
  夕照臨軒堕     夕照(せきしょう)  軒(けん)に臨んで堕(お)ち
  棲鳥当我還     棲鳥(せいちょう)  我れに当たって還(かえ)る
  菡萏溢嘉色     菡萏(かんたん)は嘉(よ)き色を溢(あふ)らせ
  篔簹遺清班     篔簹(うんとう)は清き班(まだら)を遺(のこ)す
  神舒屏羇鎖     神(こころ)舒(の)びて羇鎖(きさ)を屏(しりぞ)け
  志適忘幽潺     志(おもい)適(かな)いて幽潺(ゆうせん)を忘る
  棄逐久枯槁     棄(す)て逐(お)われて久しく枯槁(ここう)し
  迨今始開顔     今に迨(およ)んで始めて顔(かお)を開く

  ⊂訳⊃
          遠くの山には   多くの峰がひしめき
          澄んだ流れは  清らかな入江を抱く
          窓からは     夕陽の沈むのが見え
          塒に帰る鳥は  目の前を飛んでいく
          蓮の花は    めでたい色を放ち
          水辺の竹には  清らかな斑点がある
          心は伸びやかになり  貶謫の身は消え去り
          いい気持ちになって  流す涙を忘れてしまう
          追放されて    枯れ木のようになっていたが
          いまになって   ようやく顔をほころばせる


 ⊂ものがたり⊃ 中十句のはじめ六句で、西亭からの眺めをさらに詳しく描きます。ここでは陶淵明の詩句が援用されており、「夕照 軒に臨んで堕ち 棲鳥 我れに当たって還る」は陶淵明の「飲酒二十首」其の五(平成25年6月10日のブログ参照)の詩句を踏まえています。陶淵明の心境にあると言いたいのでしょう。
 つぎの四句は前段二十二句の結びに相当し、「羇鎖」は繋がれていること、「幽潺」はひそかに流れる水の音をいいます。清らかな自然に接することで貶謫の身であることを忘れ、悔し涙を忘れるというのです。「顔を開く」は謝霊雲の「従弟恵連に酬ゆ」に「開顔して心胸を披(ひら)く」とあり、山水に貶謫の慰藉を求めた謝霊雲の心と通じるものです。

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