中唐65ー盧仝
除夜 除夜
衰残帰未遂 衰残(すいざん) 帰らんとして遂(と)げず
寂寞此宵情 寂寞(せきばく) 此宵(こんしょう)の情
旧国余千里 旧国 千里を余(あま)し
新年隔数更 新年 数更(すうこう)を隔(へだ)つ
寒猶近北峭 寒は猶(な)お北に近づきて峭(きび)しく
風漸向東生 風は漸(ようや)く東に向かいて生ず
惟見長安陌 惟(た)だ見る 長安の陌(みち)
晨鐘度火城 晨鐘(しんしょう) 火城(かじょう)を度(わた)る
⊂訳⊃
老いて故郷に 帰りたいが帰れない
除夜の夜には 寂しさがこみあげる
古里は 千里のかなたにあり
新年は 数刻を隔てるだけだ
寒気は厳しく 北のすぐ近くにあり
風はようやく 東に移って吹きはじめる
都大路の向こうに 宮城の炬火
煌々と輝く城を 夜明けの鐘の音が越えていく
⊂ものがたり⊃ 唐では冬至と元旦の朝会には宮城に松明をつらね、人々はこれを火城と呼びました。前半四句は除夜の夜の感懐。「旧国」は故郷のことで、古里は遠いが新年はすぐ近くにあると、距離と時間を対比します。「新年」は新年の朝会のことで、群臣は夜明けまえに参内して天子に拝謁します。
後半四句は宮城へむかうときの感懐です。早春の早朝なので寒気は厳しく、やっと東風(春風)になりかけたところです。結びの「惟だ見る」に作者のやりきれない気持ちがこめられており、「火城」の上を夜明けの鐘の音が越えていくと素っ気なく結んでいます。
太和九年(835)に甘露の変が起きたとき、盧仝は宰相王涯(おうがい)の邸宅を訪問中でした。そのため側杖をくらって王涯とともに殺されてしまいました。
除夜 除夜
衰残帰未遂 衰残(すいざん) 帰らんとして遂(と)げず
寂寞此宵情 寂寞(せきばく) 此宵(こんしょう)の情
旧国余千里 旧国 千里を余(あま)し
新年隔数更 新年 数更(すうこう)を隔(へだ)つ
寒猶近北峭 寒は猶(な)お北に近づきて峭(きび)しく
風漸向東生 風は漸(ようや)く東に向かいて生ず
惟見長安陌 惟(た)だ見る 長安の陌(みち)
晨鐘度火城 晨鐘(しんしょう) 火城(かじょう)を度(わた)る
⊂訳⊃
老いて故郷に 帰りたいが帰れない
除夜の夜には 寂しさがこみあげる
古里は 千里のかなたにあり
新年は 数刻を隔てるだけだ
寒気は厳しく 北のすぐ近くにあり
風はようやく 東に移って吹きはじめる
都大路の向こうに 宮城の炬火
煌々と輝く城を 夜明けの鐘の音が越えていく
⊂ものがたり⊃ 唐では冬至と元旦の朝会には宮城に松明をつらね、人々はこれを火城と呼びました。前半四句は除夜の夜の感懐。「旧国」は故郷のことで、古里は遠いが新年はすぐ近くにあると、距離と時間を対比します。「新年」は新年の朝会のことで、群臣は夜明けまえに参内して天子に拝謁します。
後半四句は宮城へむかうときの感懐です。早春の早朝なので寒気は厳しく、やっと東風(春風)になりかけたところです。結びの「惟だ見る」に作者のやりきれない気持ちがこめられており、「火城」の上を夜明けの鐘の音が越えていくと素っ気なく結んでいます。
太和九年(835)に甘露の変が起きたとき、盧仝は宰相王涯(おうがい)の邸宅を訪問中でした。そのため側杖をくらって王涯とともに殺されてしまいました。