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ティェンタオの自由訳漢詩 2046

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 中唐61ー賈島
   暮過山村           暮に山村を過ぎる

  数里聞寒水     数里(すうり)    寒水(かんすい)を聞く
  山家少四隣     山家(さんか)   四隣(しりん)少なし
  怪禽啼曠野     怪禽(かいきん)  曠野(こうや)に啼(な)き
  落日恐行人     落日(らくじつ)   行人(こうじん)を恐れしむ
  初月未終夕     初月(しょげつ)  未(いま)だ夕べを終えず
  辺烽不過秦     辺烽(へんほう)  秦(しん)を過ぎず
  蕭条桑柘外     蕭条(しょうじょう)たり  桑柘(そうしゃ)の外(ほか)
  煙火漸相親     煙火(えんか)   漸(よう)やく相親(あいした)しむ

  ⊂訳⊃
          数里の間   冷たい水の音
          山里では   家はまばらで隣家もない
          荒れた野で  鳥は怪しげな声で鳴き
          日が暮れて  旅する者は恐れを抱く
          三日月は   出たかと思えば沈み
          悪い報せが 都に届かないのは幸せだ
          寂しげな   桑と柘植の木立の向こう
          立ち昇る炊煙に  私はやっと安堵する


 ⊂ものがたり⊃ 賈島(かとう:779ー843)は范陽(河北省涿県)の人。二十数年も科挙に落第しつづけ、僧になって長安の清龍寺に住みます。当時流行していた白居易らの平易な詩風に反対し、詩は苦吟して作るべきものと主張し、孟郊とならぶ苦吟の詩を書きました。「推敲」の故事は有名です。
 詩は冬の日暮れに山村を過ぎたときの作で、寒々とした流れの音を聞きながら山間の村にさしかかります。中二聯の対句は旅の描写と感懐で、荒野で名も知らぬ鳥の鳴き声を聞き、日が暮れて泊まる宿がないことに恐れを抱きます。
 「辺烽 秦を過ぎず」というのは、直訳すると国境からの烽火が「秦」(都のある地域)にやって来ないになり、胡族の侵入のような悪い報せもなく平和であることを比喩的に言うものです。そして結びの二句、「桑柘」は桑と柘植のことで村里近くの点景でしょう。その木立の向こうに「煙火」(炊煙)が立ち昇るのを見て、ようやく人里に帰って来たと安堵するのです。  

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