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ティェンタオの自由訳漢詩 2063

 中唐60ー張籍
    詠懐              詠懐

  老去多悲事     老去(ろうきょ)  悲事(ひじ)多し
  非唯見二毛     唯(ただ)  二毛(にもう)を見るのみに非(あら)ず
  眼昏書字大     眼(まなこ)昏くして 書字(しょじ)大に
  耳重語声高     耳(みみ)重くして  語声(ごせい)高し
  望月偏増思     月を望めば   偏(ひとえ)に思いを増し
  尋山覚発労     山を尋ぬれば  労(ろう)を発するを覚ゆ
  都無作官意     都(すべ)て官(かん)作(た)るの意(い)無し
  頼得在閑曹     頼(さいわ)いに閑曹(かんそう)に在るを得たり

  ⊂訳⊃
          老年になると  悲しいことが多くなる
          髪の毛が    白くなるのを見るだけではない
          目が見え難く  書く字は大きくなり
          耳が遠くて   声は自然と高くなる
          月を眺めても  もの思いが増え
          山に登っても  疲れを覚える
          勤めの意欲も なくしてしまったが
          幸いなことに  暇な官職にありついている


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「詠懐」は阮籍(げんせき)がこの題を用いたときは内面の深刻な問題を訴えるもの(平成25.2.23ー27のブログ参照)でしたが、ここでは個人の言い訳に変化しています。はじめの二句では老齢の一般論をのべます。
 中二聯の対句で具体論に入り、まず目と耳の問題。つぎは自分の行動と心理で、月を眺めても物思いにふけりがちになり、山を訪れても疲れを覚えます。そこでいいたいのは最後の二句で、もはや「官」(役人)である意欲もなくしたが、幸いなことに「閑曹」(暇な官職)についていると詠います。
 張籍は剛直な性格で、韓愈としばしば争論したと伝えられていますが、韓愈周辺の詩人のなかでは出世した方であり、詩風は温和な感じです。文宗の太和四年(830)ころになくなり、享年六十五歳くらいです。     

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