中唐60ー張籍
詠懐 詠懐
老去多悲事 老去(ろうきょ) 悲事(ひじ)多し
非唯見二毛 唯(ただ) 二毛(にもう)を見るのみに非(あら)ず
眼昏書字大 眼(まなこ)昏くして 書字(しょじ)大に
耳重語声高 耳(みみ)重くして 語声(ごせい)高し
望月偏増思 月を望めば 偏(ひとえ)に思いを増し
尋山覚発労 山を尋ぬれば 労(ろう)を発するを覚ゆ
都無作官意 都(すべ)て官(かん)作(た)るの意(い)無し
頼得在閑曹 頼(さいわ)いに閑曹(かんそう)に在るを得たり
⊂訳⊃
老年になると 悲しいことが多くなる
髪の毛が 白くなるのを見るだけではない
目が見え難く 書く字は大きくなり
耳が遠くて 声は自然と高くなる
月を眺めても もの思いが増え
山に登っても 疲れを覚える
勤めの意欲も なくしてしまったが
幸いなことに 暇な官職にありついている
⊂ものがたり⊃ 詩題の「詠懐」は阮籍(げんせき)がこの題を用いたときは内面の深刻な問題を訴えるもの(平成25.2.23ー27のブログ参照)でしたが、ここでは個人の言い訳に変化しています。はじめの二句では老齢の一般論をのべます。
中二聯の対句で具体論に入り、まず目と耳の問題。つぎは自分の行動と心理で、月を眺めても物思いにふけりがちになり、山を訪れても疲れを覚えます。そこでいいたいのは最後の二句で、もはや「官」(役人)である意欲もなくしたが、幸いなことに「閑曹」(暇な官職)についていると詠います。
張籍は剛直な性格で、韓愈としばしば争論したと伝えられていますが、韓愈周辺の詩人のなかでは出世した方であり、詩風は温和な感じです。文宗の太和四年(830)ころになくなり、享年六十五歳くらいです。
詠懐 詠懐
老去多悲事 老去(ろうきょ) 悲事(ひじ)多し
非唯見二毛 唯(ただ) 二毛(にもう)を見るのみに非(あら)ず
眼昏書字大 眼(まなこ)昏くして 書字(しょじ)大に
耳重語声高 耳(みみ)重くして 語声(ごせい)高し
望月偏増思 月を望めば 偏(ひとえ)に思いを増し
尋山覚発労 山を尋ぬれば 労(ろう)を発するを覚ゆ
都無作官意 都(すべ)て官(かん)作(た)るの意(い)無し
頼得在閑曹 頼(さいわ)いに閑曹(かんそう)に在るを得たり
⊂訳⊃
老年になると 悲しいことが多くなる
髪の毛が 白くなるのを見るだけではない
目が見え難く 書く字は大きくなり
耳が遠くて 声は自然と高くなる
月を眺めても もの思いが増え
山に登っても 疲れを覚える
勤めの意欲も なくしてしまったが
幸いなことに 暇な官職にありついている
⊂ものがたり⊃ 詩題の「詠懐」は阮籍(げんせき)がこの題を用いたときは内面の深刻な問題を訴えるもの(平成25.2.23ー27のブログ参照)でしたが、ここでは個人の言い訳に変化しています。はじめの二句では老齢の一般論をのべます。
中二聯の対句で具体論に入り、まず目と耳の問題。つぎは自分の行動と心理で、月を眺めても物思いにふけりがちになり、山を訪れても疲れを覚えます。そこでいいたいのは最後の二句で、もはや「官」(役人)である意欲もなくしたが、幸いなことに「閑曹」(暇な官職)についていると詠います。
張籍は剛直な性格で、韓愈としばしば争論したと伝えられていますが、韓愈周辺の詩人のなかでは出世した方であり、詩風は温和な感じです。文宗の太和四年(830)ころになくなり、享年六十五歳くらいです。