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ティェンタオの自由訳漢詩 2062

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 中唐59ー張籍
   夏日閑居           夏日閑居

  無事門多閉     事(こと)無く  門  多く閉(と)ず
  偏知夏日長     偏(ひと)えに知る夏日(かじつ)の長きを
  早蝉声寂寞     早蝉(そうぜん)  声は寂寞(せきばく)
  新竹気清涼     新竹(しんちく)  気は清涼(せいりょう)
  閑対臨書案     閑(しずか)に対するに臨書(りんしょ)の案(つくえ)
  看移曬薬牀     看(かん)移す曬薬(さいやく)の牀(いす)
  自憐帰未得     自ら憐(あわ)れむ  帰るを未(いま)だ得ず
  猶寄在班行     猶(な)お寄せて   班行(はんこう)に在るを

  ⊂訳⊃
          何事もなく  門を閉ざしていると
          夏の陽は   いっそう長く感じられる
          朝の蝉は   ほそぼそと鳴き
          竹の新芽は 涼しげに伸びる
          読書をしようと   静かに机にむかい
          ふと見れば  床几の上に薬草が乾してある
          辞職もせず  役所に席だけを置いている
          そんなわが身が  恥ずかしい


 ⊂ものがたり⊃ 夏の日の閑居の詩。まずはじめの二句で閑居の感懐をのべます。中二聯の対句は自宅の庭のようすでしょう。朝蝉の声、竹の新芽、そんなものに目をやりながら、読書でもしようと机にむかいます。そのとき「曬薬」、薬草が乾してあるのが目につきました。
 「牀」は椅子というより牀几に近く、木の台の上に薬草を並べて乾してあります。作者が言いたかったのはこのことで、病気のために役所を休んでいるのです。病気は目の病気であったようです。
 結びの「帰るを未だ得ず」は故郷に帰らないこと、転じて辞職しないことをいいます。病気で役所にも出らずに「班行」(朝廷の席次)だけを保っている。そんなわが身が恥かしいと同僚か友人に伝える詩でしょう。

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