中唐59ー張籍
夏日閑居 夏日閑居
無事門多閉 事(こと)無く 門 多く閉(と)ず
偏知夏日長 偏(ひと)えに知る夏日(かじつ)の長きを
早蝉声寂寞 早蝉(そうぜん) 声は寂寞(せきばく)
新竹気清涼 新竹(しんちく) 気は清涼(せいりょう)
閑対臨書案 閑(しずか)に対するに臨書(りんしょ)の案(つくえ)
看移曬薬牀 看(かん)移す曬薬(さいやく)の牀(いす)
自憐帰未得 自ら憐(あわ)れむ 帰るを未(いま)だ得ず
猶寄在班行 猶(な)お寄せて 班行(はんこう)に在るを
⊂訳⊃
何事もなく 門を閉ざしていると
夏の陽は いっそう長く感じられる
朝の蝉は ほそぼそと鳴き
竹の新芽は 涼しげに伸びる
読書をしようと 静かに机にむかい
ふと見れば 床几の上に薬草が乾してある
辞職もせず 役所に席だけを置いている
そんなわが身が 恥ずかしい
⊂ものがたり⊃ 夏の日の閑居の詩。まずはじめの二句で閑居の感懐をのべます。中二聯の対句は自宅の庭のようすでしょう。朝蝉の声、竹の新芽、そんなものに目をやりながら、読書でもしようと机にむかいます。そのとき「曬薬」、薬草が乾してあるのが目につきました。
「牀」は椅子というより牀几に近く、木の台の上に薬草を並べて乾してあります。作者が言いたかったのはこのことで、病気のために役所を休んでいるのです。病気は目の病気であったようです。
結びの「帰るを未だ得ず」は故郷に帰らないこと、転じて辞職しないことをいいます。病気で役所にも出らずに「班行」(朝廷の席次)だけを保っている。そんなわが身が恥かしいと同僚か友人に伝える詩でしょう。
夏日閑居 夏日閑居
無事門多閉 事(こと)無く 門 多く閉(と)ず
偏知夏日長 偏(ひと)えに知る夏日(かじつ)の長きを
早蝉声寂寞 早蝉(そうぜん) 声は寂寞(せきばく)
新竹気清涼 新竹(しんちく) 気は清涼(せいりょう)
閑対臨書案 閑(しずか)に対するに臨書(りんしょ)の案(つくえ)
看移曬薬牀 看(かん)移す曬薬(さいやく)の牀(いす)
自憐帰未得 自ら憐(あわ)れむ 帰るを未(いま)だ得ず
猶寄在班行 猶(な)お寄せて 班行(はんこう)に在るを
⊂訳⊃
何事もなく 門を閉ざしていると
夏の陽は いっそう長く感じられる
朝の蝉は ほそぼそと鳴き
竹の新芽は 涼しげに伸びる
読書をしようと 静かに机にむかい
ふと見れば 床几の上に薬草が乾してある
辞職もせず 役所に席だけを置いている
そんなわが身が 恥ずかしい
⊂ものがたり⊃ 夏の日の閑居の詩。まずはじめの二句で閑居の感懐をのべます。中二聯の対句は自宅の庭のようすでしょう。朝蝉の声、竹の新芽、そんなものに目をやりながら、読書でもしようと机にむかいます。そのとき「曬薬」、薬草が乾してあるのが目につきました。
「牀」は椅子というより牀几に近く、木の台の上に薬草を並べて乾してあります。作者が言いたかったのはこのことで、病気のために役所を休んでいるのです。病気は目の病気であったようです。
結びの「帰るを未だ得ず」は故郷に帰らないこと、転じて辞職しないことをいいます。病気で役所にも出らずに「班行」(朝廷の席次)だけを保っている。そんなわが身が恥かしいと同僚か友人に伝える詩でしょう。