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ティェンタオの自由訳漢詩 2058

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 中唐55ー孟郊
    苦寒吟              苦寒吟

  天色寒青蒼     天色(てんしょく)寒くして青蒼(せいそう)たり
  北風叫枯桑     北風(ほくふう)   枯桑(こそう)に叫ぶ
  厚冰無裂文     厚冰(こうひょう)  裂文(れつぶん)無く
  短日有冷光     短日(たんじつ)  冷光(れいこう)有り
  敲石不得火     石を敲(たた)けども火を得ず
  壮陰正奪陽     陰(いん)壮(さか)んにして正(まさ)に陽(よう)を奪う
  調苦竟何言     調苦(ちょうく)   竟(つい)に何をか言わん
  凍吟成此章     凍吟(とおぎん)  此の章(しょう)を成す

  ⊂訳⊃
          寒々とした蒼い空
          北風が  枯れた桑の木を鳴らす
          部厚い氷には裂け目がなく
          冬の陽が冷たく光るだけ
          火打石を叩くが  発火せず
          陰の気が盛んで  陽気を奪う
          苦吟するが  詠うことができず
          凍えながら  この詩をつくる


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「苦寒吟」(くかんぎん)は楽府題です。詩作に際して身を削るように苦吟したといわれる孟郊が、人生の苦労と詩作の困難を二つ合わせて冬の寒気の苦しさに喩えるものです。はじめの二句は北風吹きすさぶ冬の日の設定。
 中二聯の対句には重厚な比喩があります。厚い氷には裂け目がなく、冷たい冬の陽が射しているだけといいます。それは入り込む隙のない世間のことでしょう。火打石を叩いても発火しないというのは、詩句が生まれないことの比喩でしょう。結びの「調苦」は苦吟することで、冬の寒さに凍えながらやっとこの詩をつくったと詠います。
 しばらく野にいた孟郊は、そのご鄭余慶(ていよけい)に見出されて水陸転運判官に任じられ、興元軍節度参謀になりますが、赴任の途中で病死しました。享年六十四歳。韓愈は孟郊を尊敬する詩人として遇しました。

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