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ティェンタオの自由訳漢詩 2057

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 中唐54ー孟郊
    燭蛾               燭蛾

  燈前双舞蛾     燈前(とうぜん)  双舞(そうぶ)の蛾(が)
  厭生何太切     生(せい)を厭(いと)うこと  何ぞ太(はなは)だ切なる
  想爾飛来心     爾(なんじ)が飛び来たる心を想うに
  悪明不悪滅     明(めい)を悪(にく)みて   滅するを悪まざるならん
  天若百尺高     天  若(も)し百尺の高さなるも
  応去掩明月     応(まさ)に去(ゆ)きて明月を掩(おお)うべし

  ⊂訳⊃
          灯火の前に   飛んできた二匹の蛾
          生きることを  どうしてそんなに嫌がるのか
          飛んで来る   お前の心を思うと
          明るさを憎み  暗いものを好むのであろうか
          天がもし     百尺の高さであっても高く飛んで
          明るい月に   覆いかぶさろうとするだろう


 ⊂ものがたり⊃ 任地に母親を呼び寄せましたが、孟郊は職務に熱意が持てませんでした。川べりで酒を飲んでは詩を作っていたといいます。そのため俸給を減額されて職を捨てます。
 詩題の「燭蛾」(しょくが)は灯火に飛んできた蛾のことです。六句の五言古詩。はじめの二句は燭台の火に向かって飛んできた蛾に、どうしてそんなに生きることを嫌がるのかと問いかけます。
 中二句では蛾の心境を想像して「明を悪みて 滅するを悪まざるならん」といいます。ここは孟郊の哲学が反映している部分で、蛾は明るいものを憎んで火を消すために飛んで来るのかと詠うのです。中国語で「滅するを悪まざる」は明が暗になるのを好むの強調形で、蛾の行動に対する孟郊の屈折した解釈があります。
 結びの二句ではさらに想像をふくらませ、夜空に月が輝いているが、暗いのを好きなお前たちは天空高く飛んでいって明月に覆いかぶさろうとするのだろうといいます。この詩は孟郊の代表作とされる作品で、破滅型の人生観をしめすものです。

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