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ティェンタオの自由訳漢詩 2054

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 中唐51ー韓愈
     山石               山石          (後半十句)

  天明独去無道路   天明(てんめい)  独り去(ゆ)きて  道路を無(な)みし
  出入高下窮煙霏   出入(しゅつにゅう)  高下して  煙霏(えんぴ)を窮(きわ)む
  山紅澗碧紛爛漫   山は紅(あか)く  澗(たに)は碧(あお)く  紛(ふん)として爛漫(らんまん)たり
  時見松櫪皆十囲   時に松櫪(しょうれき)の皆(みな)十囲(じゅうい)なるを見る
  当流赤足蹋澗石   流れに当たって赤足(せきそく)にて澗石(かんせき)を蹋(ふ)めば
  水声激激風吹衣   水声(すいせい)は激激として風は衣(ころも)を吹く
  人生如此自可楽   人生  此(かく)の如く自(おのず)から楽しむ可(べ)し
  豈必局束為人鞿   豈(あ)に必ずしも局束(きょくそく)として人に鞿(しば)られんや
  嗟哉吾党二三子   嗟哉(ああ)  吾(わ)が党の二三子(にさんし)よ
  安得至老不更帰   安(いずく)んぞ老いに至るまで更に帰らざるを得んや

  ⊂訳⊃
          夜明けにひとり起き出して  道を選ばずに歩きまわる
          谷を出入りし山を上下して  靄の中をどこまでも行く
          山はくれない 谷間は緑色  目を奪うほど鮮やかで
          ときに見かける松や檪は   どれも十抱えはあるだろう
          流れに行き当たり  谷川の石を素足で踏むと
          水音は高くひびき  風は衣をひるがえす
          これでこそ    人生は楽しいのだ
          窮屈な思いで  役人生活に縛られることはない
          わが古文復興運動の同志たちよ
          引退もせずに  老いるまで勤める必要はないのだ


 ⊂ものがたり⊃ 後半十句のはじめ六句では、夜明けにひとり起き出してあたりの山中を歩きまわります。「煙霏」はもや、霞のことで、「出入 高下して 煙霏を窮む」というのも不安定な境遇にある自分を喩えるのでしょう。「流れに当たって」は谷川の流れが行く手をさえぎるのであり、「赤足」(裸足)で流れに入っていくと、「水声は激激として風は衣を吹く」のです。最後の四句は結びで、人生観が詠われます。
 何度挑戦しても銓試に及第しない韓愈は、役人生活に見切りをつけたような言い方をしていますが、翌年の貞元十八年(802)に吏部試に及第しないまま国子監四門博士に任用されます。翌年には監察御史にすすみますが、京兆尹李実(りじつ)を弾劾して逆に陽山(広東省)の県令に左遷されてしまいます。赦されて国子博士、河南令、史館修撰、中書舎人を歴任、五十二歳のときに刑部侍郎に進みました。

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