中唐44ー王建
閑居即時 閑居即時
老病貪光景 老病(ろうびょう) 光景を貪(むさぼ)り
尋常不下簾 尋常(じんじょう) 簾(すだれ)を下(くだ)さず
妻愁耽酒僻 妻は愁う 耽酒(たんしゅ)の僻(へき)
人怪考詩厳 人は怪しむ 考詩(こうし)の厳(げん)
小婢偸紅紙 小婢(しょうひ)は紅紙(こうし)を偸(ぬす)み
嬌児弄白髯 嬌児(きょうじ)は白髯(はくぜん)を弄(もてあそ)ぶ
有時看旧卷 時(とき)有りて旧卷(きゅうかん)を看(み)るに
未免意中嫌 未だ免(まぬが)れず 意中(いちゅう)に嫌(いと)うを
⊂訳⊃
老いて病気がちだが いい景色が大好き
部屋の簾は 引き上げたままだ
私の深酒を 妻は心配し
友人たちは 詩句にこだわるのを不思議がる
小間使いは 私の詩箋をこっそり持ち出し
やんちゃな孫は 白い頬髯を引っぱって遊ぶ
ときどきは 巻物を開いて旧作を見るが
いまだに満足できず いやな気分になる
⊂ものがたり⊃ 詩題の「閑居即時」(かんきょそくじ)は閑居のなか思いつくままに詠んだという意味で、老年の作です。はじめの二句で、老いて病気がちになったが、まだ風流の心は失っていないと自分を誇示します。中四句はそうした作者の最近の暮らしぶりです。
相変わらず深酒をしていますが、詩の推敲は厳格にやっています。「小婢」の句は面白い光景で、小間使いの娘が王建の詩が書いてある「紅紙」(詩を書くための薄紅色の便箋)をこっそり持ち出していくと詠います。ここは小間使いを非難しているのではなく、おれの詩も小間使いの小使い銭ぐらいにはなるらしいと笑って言っているのです。
つぎの「嬌児」の句では、孫が自分の白い頬髯にたわむれると満足げに家族を詠います。しかし最後は、いまも自分の詩には満足していないと意欲のあるところを詠って結びとします。
王建は辺塞の軍から帰還後は咸陽原上(陝西省咸陽市)に住み、大和五年(831)に亡くなります。享年六十六歳くらいです。
閑居即時 閑居即時
老病貪光景 老病(ろうびょう) 光景を貪(むさぼ)り
尋常不下簾 尋常(じんじょう) 簾(すだれ)を下(くだ)さず
妻愁耽酒僻 妻は愁う 耽酒(たんしゅ)の僻(へき)
人怪考詩厳 人は怪しむ 考詩(こうし)の厳(げん)
小婢偸紅紙 小婢(しょうひ)は紅紙(こうし)を偸(ぬす)み
嬌児弄白髯 嬌児(きょうじ)は白髯(はくぜん)を弄(もてあそ)ぶ
有時看旧卷 時(とき)有りて旧卷(きゅうかん)を看(み)るに
未免意中嫌 未だ免(まぬが)れず 意中(いちゅう)に嫌(いと)うを
⊂訳⊃
老いて病気がちだが いい景色が大好き
部屋の簾は 引き上げたままだ
私の深酒を 妻は心配し
友人たちは 詩句にこだわるのを不思議がる
小間使いは 私の詩箋をこっそり持ち出し
やんちゃな孫は 白い頬髯を引っぱって遊ぶ
ときどきは 巻物を開いて旧作を見るが
いまだに満足できず いやな気分になる
⊂ものがたり⊃ 詩題の「閑居即時」(かんきょそくじ)は閑居のなか思いつくままに詠んだという意味で、老年の作です。はじめの二句で、老いて病気がちになったが、まだ風流の心は失っていないと自分を誇示します。中四句はそうした作者の最近の暮らしぶりです。
相変わらず深酒をしていますが、詩の推敲は厳格にやっています。「小婢」の句は面白い光景で、小間使いの娘が王建の詩が書いてある「紅紙」(詩を書くための薄紅色の便箋)をこっそり持ち出していくと詠います。ここは小間使いを非難しているのではなく、おれの詩も小間使いの小使い銭ぐらいにはなるらしいと笑って言っているのです。
つぎの「嬌児」の句では、孫が自分の白い頬髯にたわむれると満足げに家族を詠います。しかし最後は、いまも自分の詩には満足していないと意欲のあるところを詠って結びとします。
王建は辺塞の軍から帰還後は咸陽原上(陝西省咸陽市)に住み、大和五年(831)に亡くなります。享年六十六歳くらいです。