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ティェンタオの自由訳漢詩 2043

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 中唐40ー李益
   立秋前一日覧鏡      立秋前の一日 鏡を覧る

  万事銷身外     万事(ばんじ)    身外(しんがい)に銷(き)え
  生涯在鏡中     生涯(しょうがい)  鏡中(きょうちゅう)に在り
  唯将両鬢雪     唯(た)だ両鬢(りょうびん)の雪を将(もつ)て
  明日対秋風     明日(みょうにち)  秋風(しゅうふう)に対せん

  ⊂訳⊃
          総ての事が  私から消え去って

          私の生涯は  鏡の中の姿だけ

          明日からは  真っ白な髪の毛で

          苦難の秋風に立ち向かうのだ


 ⊂ものがたり⊃ 李益の文名はやがて憲宗に聞こえ、召されて秘書少監・集賢殿学士に任じられます。一時降格されたこともありましたが、侍御史、太子賓客などを歴任して礼部尚書(正三品)に至ります。
 詩人としては時代の人気者、役人としては礼部尚書にまで出世した李益ですが、老年になると老いの悲哀を詠っています。ただし、有名な李白の「秋浦の歌」其の十五(白髪 三千丈)がありますので、求められて同様の五言絶句を作ったのかもしれません。
 起句の「万事 身外に銷え」は総ての事が自分から消え去ったという意味で、残されたのは鏡の中の姿だけです。「秋風」には苦難の人生という意味があり、鏡に映っている白髪頭で人生に立ち向かわなければならないと詠うのです。
 文宗の太和三年(829)ころに亡くなり、享年八十二歳くらいでした。

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