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ティェンタオの自由訳漢詩 2042

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 中唐39ー李益
     写情                情を写す

  水紋珍簟思悠悠   水紋(すいもん)の珍簟(ちんてん)  思い悠悠(ゆうゆう)
  千里佳期一夕休   千里の佳期(かき)  一夕(いっせき)にして休(や)む
  従此無心愛良夜   此(こ)れ従(よ)り   良夜(りょうや)を愛するに心無し
  任他明月下西楼   任他(さもあらばあれ)  明月の西楼(せいろう)に下るを

  ⊂訳⊃
          さざ波模様の竹蓆  わたしは思いに沈む

          固く誓った約束も  一夜のうちに崩れてしまう

          心地よい夜を     もはや楽しもうとは思わない

          明月が西の高楼に沈むのも  どうでもいいことだ


 ⊂ものがたり⊃ 李益は盛唐で盛んだった辺塞詩を復活させ、多くの名作を残しましたが、艶っぽい詩もつくっています。李益の七言絶句は当時の演芸場で人気抜群であったといいます。詩題の「情を写す」には自分の気持ちを振り払うという意味があります。
 李益は若いころ霍小玉(かくしょうぎょく)という妓女を好きになりますが、そのご別れてしまいます。詩は霍小玉が亡くなったことを聞いてつくったといわれており、「写情」は霍小玉との思い出を振り払うという意味になります。
 なお、李益と霍小玉との恋物語は『霍小玉伝』という小説になっており、「大暦のころ、隴西の李益という書生は、二十歳のとき進士に及第した」(唐宋伝奇集)という書き出しになっています。
 詩の冒頭「水紋の珍簟」はさざなみ模様のある竹蓆のことで、霍小玉との思い出の品でしょう。名調子の起句です。承句の「一夕にして休む」というのは、霍小玉の死によって再会のあてがなくなったことをいうのでしょう。
 後半、結句の「任他」(さもあらばあれ)は、もうどうでもいい勝手にしろという意味で、明月が西の高楼に沈むような詩的な風景ももはやどうでもよくなったと、なげやりな気分を詠っています。通俗的な語法が大衆の喝采をあびました。

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