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ティェンタオの自由訳漢詩 2035

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 中唐32ー韋応物
    答李儋               李儋に答う

  去年花裏逢君別   去年(きょねん)  花裏(かり)  君に逢(あ)うて別れ
  今日花開又一年   今日(こんにち)  花開いて   又(ま)た一年
  世事茫茫難自料   世事(せいじ)茫茫(ぼうぼう)として  自(みずか)ら料(はか)り難く
  春愁黯黯独成眠   春愁(しゅんしゅう)黯黯(あんあん)として  独り眠りを成(な)す
  身多疾病思田里   身に疾病(しっぺい)多くして  田里(でんり)を思い
  邑有流亡愧俸銭   邑(むら)に流亡(りゅうぼう)有りて  俸銭(ほうせん)を愧(は)ず
  聞道欲来相問訊   聞道(きくなら)く  来たりて相問訊(あいもんじん)せんと欲すと
  西楼望月幾回円   西楼(せいろう)  月を望んで幾回(いくかい)か円(まど)かなる

  ⊂訳⊃
          去年  花のころ君と逢って別れ
          今年  花が咲いて一年が過ぎた
          世の中はすっかり乱れ  どうすればいいか分からない
          春の愁いに心はふさぎ  ひとり眠りについている
          体は病気がちで   故郷を思い
          村では流民が増え  俸禄を恥じる
          聞けばいろいろと  尋ねたいことがおありの由
          西の館で月を望み  幾度も満月になりました


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「李儋」(りせん)は友人と思われますが経歴は不詳です。はじめの二句は導入部で、去年の春に李儋と会い、それから一年が過ぎてまた花の季節になったと状況を示します。詩は蘇州刺史のときの作とされており、蘇州で会ったのでしょう。
 中四句では世の中と自分の状況を交互に述べます。頷聯の対句は世の乱れとそれを憂える作者です。頚聯の対句では病気がちであることを述べ、「田里を思い」と詠います。田里は郷里のことで、引退を思うと言っているのです。また、近ごろは流民となる者が多く、「俸銭を愧ず」と「田家を観る」(8月24日のグログ参照)の詩と同じようなことを言っています。
 結びの「聞道く」は伝聞を示す言い方で、李儋から書信がきて再訪したいと言ってきたのに答えるのがこの詩です。「月を望んで幾回か円かなる」はひとりで満月を見て過ごす毎日だからぜひ訪ねてきてくれという含みになります。
 蘇州刺史のあと、韋応物は諸道塩鉄転運江淮留後に至り、退官後は永定精舎に住みました。徳宗の貞元七年(791)ころに亡くなり、享年五十五歳くらいでした。

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