中唐27ー韋応物
観田家 田家を観る
微雨衆卉新 微雨(びう) 衆卉(しゅうき)新たに
一雷驚蟄始 一雷(いちらい) 驚蟄(けいちつ)始まる
田家幾日閑 田家(でんか) 幾日(いくにち)か閑(かん)なる
耕種従此起 耕種(こうしゅ) 此れ従(よ)り起こる
丁壮倶在野 丁壮(ていそう) 倶(とも)に野(や)に在り
場圃亦就理 場圃(じょうほ) 亦(ま)た理(り)に就く
帰来景常晏 帰来(きらい) 景(けい) 常に晏(く)れ
飲犢西澗水 犢(こうし)を 西澗(せいかん)の水に飲(みずか)う
飢劬不自苦 飢劬(きく) 自ら苦とせず
膏沢且為喜 膏沢(こうたく) 且つ喜びと為(な)す
倉廩無宿儲 倉廩(そうりん) 宿儲(しゅくちょ)無く
徭役猶未已 徭役(ようえき) 猶(な)お未だ已(や)まず
方慚不耕者 方(まさ)に慚(は)ず 耕さざる者の
禄食出閭里 禄食(ろくしょく) 閭里(りょり)より出づるを
⊂訳⊃
小雨が降って 草木も新芽を出し
雷が鳴ると 土中の虫や蛇も動き出す
農家の人々に どれだけの休暇があったのか
これから 辛い農作業がはじまるのだ
男はこぞって 田圃に出かけ
畑の土を ととのえる
家に帰るのは 日暮れのころ
西の川で 子牛に水を飲ませる
空腹の苦労は 口にせず
恵みの雨を まずは喜ぶ
米倉に 蓄えはなく
労役は 止むときがない
これを見て私は恥じる 耕さない者の俸禄が
こんな 貧しい村から出ていることを
⊂ものがたり⊃ 詩題の「田家」(でんか)は農家のことで、詩中に「西澗」とあるので滁州刺史のとき管下の村落を視察して感想を述べたものでしょう。
はじめの四句は導入部で、春の耕作が始まるころの季節感を述べます。「驚蟄」(啓蟄)は陰暦二月のはじめ、農作業を始める時期です。農閑期は終わるが、冬であっても農家は家のなかでの仕事があります。どれだけの暇があったろうかと同情するのです。
中六句では農家の人々の働き振りと心の持ち方を述べます。誰に向かって言っているのかは不明ですが、村里の長老も招かれている宴会の場であれば、都から来た刺史だが農家のこともよく理解していると示すことになります。
終わりの四句がポイントで、農家の窮状を述べ、俸禄で食べているわが身を反省して締めくくります。「倉廩」は農家の倉庫、「徭役」は国から課される労役のことで、穀物はすべて税として差し出した上、労役も止むときがありません。自分たち役人の「禄食」が貧しい「閭里」から出ていることを慚じると反省しますが、元結(7月26日のブログ参照)のように辞職するとまでは言っていません。そこに違いがあります。
観田家 田家を観る
微雨衆卉新 微雨(びう) 衆卉(しゅうき)新たに
一雷驚蟄始 一雷(いちらい) 驚蟄(けいちつ)始まる
田家幾日閑 田家(でんか) 幾日(いくにち)か閑(かん)なる
耕種従此起 耕種(こうしゅ) 此れ従(よ)り起こる
丁壮倶在野 丁壮(ていそう) 倶(とも)に野(や)に在り
場圃亦就理 場圃(じょうほ) 亦(ま)た理(り)に就く
帰来景常晏 帰来(きらい) 景(けい) 常に晏(く)れ
飲犢西澗水 犢(こうし)を 西澗(せいかん)の水に飲(みずか)う
飢劬不自苦 飢劬(きく) 自ら苦とせず
膏沢且為喜 膏沢(こうたく) 且つ喜びと為(な)す
倉廩無宿儲 倉廩(そうりん) 宿儲(しゅくちょ)無く
徭役猶未已 徭役(ようえき) 猶(な)お未だ已(や)まず
方慚不耕者 方(まさ)に慚(は)ず 耕さざる者の
禄食出閭里 禄食(ろくしょく) 閭里(りょり)より出づるを
⊂訳⊃
小雨が降って 草木も新芽を出し
雷が鳴ると 土中の虫や蛇も動き出す
農家の人々に どれだけの休暇があったのか
これから 辛い農作業がはじまるのだ
男はこぞって 田圃に出かけ
畑の土を ととのえる
家に帰るのは 日暮れのころ
西の川で 子牛に水を飲ませる
空腹の苦労は 口にせず
恵みの雨を まずは喜ぶ
米倉に 蓄えはなく
労役は 止むときがない
これを見て私は恥じる 耕さない者の俸禄が
こんな 貧しい村から出ていることを
⊂ものがたり⊃ 詩題の「田家」(でんか)は農家のことで、詩中に「西澗」とあるので滁州刺史のとき管下の村落を視察して感想を述べたものでしょう。
はじめの四句は導入部で、春の耕作が始まるころの季節感を述べます。「驚蟄」(啓蟄)は陰暦二月のはじめ、農作業を始める時期です。農閑期は終わるが、冬であっても農家は家のなかでの仕事があります。どれだけの暇があったろうかと同情するのです。
中六句では農家の人々の働き振りと心の持ち方を述べます。誰に向かって言っているのかは不明ですが、村里の長老も招かれている宴会の場であれば、都から来た刺史だが農家のこともよく理解していると示すことになります。
終わりの四句がポイントで、農家の窮状を述べ、俸禄で食べているわが身を反省して締めくくります。「倉廩」は農家の倉庫、「徭役」は国から課される労役のことで、穀物はすべて税として差し出した上、労役も止むときがありません。自分たち役人の「禄食」が貧しい「閭里」から出ていることを慚じると反省しますが、元結(7月26日のブログ参照)のように辞職するとまでは言っていません。そこに違いがあります。