Quantcast
Channel: 漢詩を楽しもう
Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

ティェンタオの自由訳漢詩 2022

$
0
0
 中唐19ー盧綸
    逢病軍人              病軍人に逢う

  行多有病住無糧   行(こう)多く   病(やまい)有りて  住むに糧(かて)無し
  万里還郷未到郷   万里(ばんり)  郷に還(かえ)らんとして  未(いま)だ郷に到らず
  蓬鬢哀吟古城下   蓬鬢(ほうびん)  哀吟(あいぎん)  古城の下(もと)
  不堪秋気入金瘡   堪えず  秋気(しゅうき)の金瘡(きんそう)に入るに

  ⊂訳⊃
          万里の行軍  病気にもなり  食糧もつきる

          故郷に帰ろうとしているが   まだ辿り着けない

          ばさばさ髪  古城のほとりで呻き声を上げ

          秋の冷気が  戦の切り傷にしみて堪えがたい


 ⊂ものがたり⊃ 盧綸(ろりん:737?ー799?)は河中蒲県(山西省永済県)の人。安禄山の乱を避けて鄱陽(江西省波陽県)に移住しました。大暦初年に都へ出て科挙に挑みましたが及第せず、宰相の元載(げんさい)に詩才を認められて、閿郷(ふんきょう:河南省)の県尉になります。累進して検校戸部郎中、監察御史に至りますが、病気のために辞職し故郷にもどりました。
 詩題の「病軍人に逢う」は病気の軍人に逢ったということ。その軍人に成り代わって作った詩です。当時は内戦や異民族との衝突が繰り返されていましたので、戦で負傷し、病気にもなり、落伍して故郷に帰る軍人を見かけたのでしょう。
 この詩には、そういう軍人が出て来るのはなぜかという問いが含まれており、そのことを言外に置いて事実の描写にとどめています。 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 554

Trending Articles