中唐18ー司空曙
江村即事 江村即事
罷釣帰来不繋船 釣を罷(や)め 帰り来たって船を繋(つな)がず
江村月落正堪眠 江村(こうそん) 月落ちて 正(まさ)に眠るに堪えたり
縦然一夜風吹去 縦然(たとえ) 一夜 風 吹き去るとも
只在芦花浅水辺 只(た)だ芦花(ろか) 浅水(せんすい)の辺(ほとり)に在らん
⊂訳⊃
釣りをやめて帰ったが 舟は岸辺に繋がない
川辺の村に月は隠れて 眠るにはちょうどよい
仮に今夜 大風が吹き どこかへ舟が流されても
芦の穂のしげる浅瀬に 漂っているだけのことだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「江村即事」(こうそんそくじ)は川辺の村での軽い作という意味です。前半は夜半に釣りを終えて帰って来たけれども、岸辺に舟を繋がないといいます。「正に眠るに堪えたり」は舟の中で眠るのに丁度よいという意味で、南国の長沙に流されていたときの作とみる説があります。
後半は仮定を詠うもので、仮に今夜、大風が吹いても舟は浅瀬に漂うだけだといいます。この詩では「釣」と「風」に寓意があり、釣りは抜擢の願望の喩えです。それを止めて帰り、釣り舟を岸に繋がないというのは諦め、もしくは達観の心境でしょう。
風は困難や逆境の喩えで、隠者の漁夫のように舟のなかで寝ていても、せいぜいその辺りの浅瀬に漂いつくだけだと不遇の身の心構えを詠うのです。
江村即事 江村即事
罷釣帰来不繋船 釣を罷(や)め 帰り来たって船を繋(つな)がず
江村月落正堪眠 江村(こうそん) 月落ちて 正(まさ)に眠るに堪えたり
縦然一夜風吹去 縦然(たとえ) 一夜 風 吹き去るとも
只在芦花浅水辺 只(た)だ芦花(ろか) 浅水(せんすい)の辺(ほとり)に在らん
⊂訳⊃
釣りをやめて帰ったが 舟は岸辺に繋がない
川辺の村に月は隠れて 眠るにはちょうどよい
仮に今夜 大風が吹き どこかへ舟が流されても
芦の穂のしげる浅瀬に 漂っているだけのことだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「江村即事」(こうそんそくじ)は川辺の村での軽い作という意味です。前半は夜半に釣りを終えて帰って来たけれども、岸辺に舟を繋がないといいます。「正に眠るに堪えたり」は舟の中で眠るのに丁度よいという意味で、南国の長沙に流されていたときの作とみる説があります。
後半は仮定を詠うもので、仮に今夜、大風が吹いても舟は浅瀬に漂うだけだといいます。この詩では「釣」と「風」に寓意があり、釣りは抜擢の願望の喩えです。それを止めて帰り、釣り舟を岸に繋がないというのは諦め、もしくは達観の心境でしょう。
風は困難や逆境の喩えで、隠者の漁夫のように舟のなかで寝ていても、せいぜいその辺りの浅瀬に漂いつくだけだと不遇の身の心構えを詠うのです。