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ティェンタオの自由訳漢詩 2018

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 中唐15ー耿湋
    秋日               秋日

  返照入閭巷     返照(へんしょう)  閭巷(りょこう)に入る
  憂来誰共語     憂(うれ)い来たるも  誰と共にか語らん
  古道少人行     古道(こどう)    人の行くこと少(まれ)に
  秋風動禾黍     秋風(しゅうふう)  禾黍(かしょ)を動かす

  ⊂訳⊃
          村里に  黄昏の光がさしこみ

          胸の愁いを  誰に語ればいいのか

          古びた道を  ゆきかう人はまれで

          秋風が  黍の畑を吹いていく


 ⊂ものがたり⊃ 代宗の大暦年間に活躍する詩人を「大暦の十才子」と言いますが、人選は一定していません。自然風詠の詩にひそかに政事批判の心懐をひそませる詩人として銭起と韓翃を掲げましたが、これから「大暦の十才子」に数えられる詩人を四人ほど取り上げます。
 耿湋(こうい:734?ー?)は河東(山西省永済県)の人。代宗の宝応二年(763)に三十歳くらいで進士に及第します。この年は吐蕃の長安侵寇などがあり、七月に広徳と改元されました。
 詩題は「秋日」(しゅうじつ)。さりげない題の五言絶句です。「閭巷」は小さな町や村里のことで、そこに「返照」(雲に当たって反射してくる夕日の光)が射しています。胸に愁いが湧いてきますが語るべき相手はいません。「古道」は昔からある古い道で、そこを通る人影はなく、秋風が「禾黍」を動かして吹いています。
 「古道」と「禾黍」に心懐がひそませてあり、「古道」はむかし聖人が行った善政のことです。「禾黍」は殷の箕子(きし)の故事を踏まえており、殷の滅亡後、箕子は荒廃した殷都の跡を通り、「麦秀でて漸漸たり 禾黍油油たり」と詠ったといいます。つまり、古きよき政事の時代は去り、荒廃した国土が残されていると危機意識を述べるのです。

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