中唐14ー載叔倫
女耕田行 女耕田行 (後半八句)
姉妹相携心正苦 姉妹(しまい) 相携(あいたずさ)えて 心 正(まさ)に苦しく
不見路人唯見土 路人(ろじん)を見ずして 唯 土を見る
疎通畦隴防乱苗 畦隴(あいろう)を疎通(そつう)して乱苗(らんびょう)を防ぎ
整頓溝塍待時雨 溝塍(こうしょう)を整頓(せいとん)して時雨(じう)を待つ
日正南岡下餉帰 日 正(まさ)に南岡(なんこう)にして 下って餉帰(しょうき)すれば
可憐朝雉擾驚飛 憐(あわれ)む可(べ)し 朝雉(ちょうち) 擾(みだ)れて驚飛(きょうひ)す
東隣西舎花発尽 東隣(とうりん) 西舎(せいしゃ) 花 発(ひら)き尽くし
共惜余芳涙満衣 共に余芳(よほう)を惜(おし)んで 涙 衣(ころも)に満つ
⊂訳⊃
姉妹は農作業に励むが 心の内はつらそうだ
道ゆく人に目を向けず 畑の土を見詰めている
畝を盛り上げて 苗が正しく伸びるようにし
溝と畔を整えて 恵みの雨を待つ
太陽が南の丘の上に来て 食事に帰ろうとすると
悲しいことに つがいの雉が乱れ飛ぶ
東隣りも西の家も 花の季節は終わり
残りの花を惜しみつつ 涙を流すだけなのだ
⊂ものがたり⊃ 後半八句のはじめ四句では、姉妹の働く姿を描きながらその胸の内を想像します。姉妹は女だけで畑仕事をしているのが恥かしいのです。しかし、よい収穫を願って必死に畑を整えています。
結びの四句では昼休みの時刻になり、「餉」(弁当)を取るために畑を下りて帰ろうとしました。すると草むらから「朝雉」(つがいの雉)が驚いて飛び立ちました。ここで「憐む可し」と言っているのは、結婚もできないでいる姉妹を歎くのです。
家に帰ると、隣の家の庭は花も終わったのに、姉妹は残りの花をいとおしみながら涙にくれるばかりでした。花は若さの喩えで、姉妹の若さも失われていくと同情するのです。
載叔倫はそのご認められて撫州(江西省臨川県)刺史、容州(広西壮族自治区容県)刺史蒹本管経略使を歴任し、善政を布いて住民に慕われたといいます。辞職後は道士になり、徳宗の貞元五年(789)に亡くなりました。享年五十八歳です。
女耕田行 女耕田行 (後半八句)
姉妹相携心正苦 姉妹(しまい) 相携(あいたずさ)えて 心 正(まさ)に苦しく
不見路人唯見土 路人(ろじん)を見ずして 唯 土を見る
疎通畦隴防乱苗 畦隴(あいろう)を疎通(そつう)して乱苗(らんびょう)を防ぎ
整頓溝塍待時雨 溝塍(こうしょう)を整頓(せいとん)して時雨(じう)を待つ
日正南岡下餉帰 日 正(まさ)に南岡(なんこう)にして 下って餉帰(しょうき)すれば
可憐朝雉擾驚飛 憐(あわれ)む可(べ)し 朝雉(ちょうち) 擾(みだ)れて驚飛(きょうひ)す
東隣西舎花発尽 東隣(とうりん) 西舎(せいしゃ) 花 発(ひら)き尽くし
共惜余芳涙満衣 共に余芳(よほう)を惜(おし)んで 涙 衣(ころも)に満つ
⊂訳⊃
姉妹は農作業に励むが 心の内はつらそうだ
道ゆく人に目を向けず 畑の土を見詰めている
畝を盛り上げて 苗が正しく伸びるようにし
溝と畔を整えて 恵みの雨を待つ
太陽が南の丘の上に来て 食事に帰ろうとすると
悲しいことに つがいの雉が乱れ飛ぶ
東隣りも西の家も 花の季節は終わり
残りの花を惜しみつつ 涙を流すだけなのだ
⊂ものがたり⊃ 後半八句のはじめ四句では、姉妹の働く姿を描きながらその胸の内を想像します。姉妹は女だけで畑仕事をしているのが恥かしいのです。しかし、よい収穫を願って必死に畑を整えています。
結びの四句では昼休みの時刻になり、「餉」(弁当)を取るために畑を下りて帰ろうとしました。すると草むらから「朝雉」(つがいの雉)が驚いて飛び立ちました。ここで「憐む可し」と言っているのは、結婚もできないでいる姉妹を歎くのです。
家に帰ると、隣の家の庭は花も終わったのに、姉妹は残りの花をいとおしみながら涙にくれるばかりでした。花は若さの喩えで、姉妹の若さも失われていくと同情するのです。
載叔倫はそのご認められて撫州(江西省臨川県)刺史、容州(広西壮族自治区容県)刺史蒹本管経略使を歴任し、善政を布いて住民に慕われたといいます。辞職後は道士になり、徳宗の貞元五年(789)に亡くなりました。享年五十八歳です。