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ティェンタオの自由訳漢詩 2011

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 中唐8ー韓翃
     寒食                 寒食

  春城無処不飛花   春城(しゅんじょう)  処(ところ)として飛花(ひか)ならざるは無く
  寒食東風御柳斜   寒食(かんしょく)   東風(とうふう)  御柳(ぎょりゅう)斜めなり
  日暮漢宮伝蝋燭   日暮(にちぼ)  漢宮(かんきゅう)  蝋燭(ろうそく)を伝え
  軽烟散入五侯家   軽烟(けいえん)散じて五侯(ごこう)の家に入る

  ⊂訳⊃
          長安の春の街は   どこへ行っても花吹雪

          寒食節の春風に   堀の柳もなびいている

          日暮れになると   蝋燭の火が宮城を出て

          薄煙を上げながら  権臣の家に入っていく


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「寒食」(かんしょく)は寒食節のことで、はじめは清明節(陰暦三月はじめ)の前日一日間でしたが、のちに三日間に拡大されました。寒食の日は火を焚くことが禁じられ、あらかじめ調理した冷たい食事を取る慣わしでした。
 「漢宮」は漢を借りる表現で、唐の宮中のことです。「蝋燭を伝え」は清明節のために火をつけた楡柳を近臣に賜わるのが慣わしでした。その火が宮中から「五侯」の家に散っていくさまを詠っています。
 「五侯」も漢代の故事を踏まえていて、権臣、特に宦官を指します。この詩には宮中に靡く人や権臣の横暴を批判する寓意があり、政事批判の詩と思われます。起句の「春城 処として飛花無ならざるはなく」は名句として名高く、この句が評判になって宮中に召されたという伝えがありますが疑問です。
 天宝末年に進士に及第した四人の詩人、銭起・張継・元結・韓翃によって、中唐の三つの詩の方向が顔を出します。ひとつは山水詩の方向ですが、自然の風物を描くなかにひそかに政事批判の心懐をひそませます。もうひとつは山水詩の抒情を深化させていく方向です。三つめは杜甫の社会詩の精神を受け継ぐもので、元結はそのはやい例です。韓翃もそのひとりでしょう。

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