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ティェンタオの自由訳漢詩 2010

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 中唐7ー韓翃
    宿石邑山中          石邑山中に宿す

  浮雲不共此山斉   浮雲(ふうん)も此の山と斉(ひと)しからず
  山靄蒼蒼望転迷   山靄(さんあい)蒼蒼(そうそう)として望めば転(うた)た迷う
  暁月暫飛千樹裏   暁月(ぎょうげつ)暫(しばら)く飛ぶ 千樹の裏(うち)
  秋河隔在数峰西   秋河(しゅうか)隔(へだ)たりて    数峰の西に在り

  ⊂訳⊃
          空に浮く雲も   この山ほどに高くはなく

          薄暗い靄の中  見下ろしても迷いは増すばかり

          明け方の月が  樹々の間にしばらく浮かび

          天の河は遠く  連なる峰の西によこたわる


 ⊂ものがたり⊃ 韓翃(かんこう:生没年不詳)は南陽(河南省?県)の人。天宝十三載(754)に元結と同年で進士に及第し、淄青節度使侯希逸(こうきいつ)の幕下に属します。そこを辞して十年ほど閑居するあいだに詩名を高め、「大暦の十才子」のひとりに数えられるようになりました。建中のはじめに召し出され、徳宗の時代に駕部郎中・知制誥、中書舎人に至ります。
 詩題の「石邑山」(せきゆうさん)は獲鹿(河北省石家荘市の西)のあたりにある山。旅の途中、山中に宿泊したときの作でしょう。承句の「山靄蒼蒼として望めば転た迷う」は個人の迷い心と解してもいいのですが、先ゆきの見えない時代の混迷をいうと解することもできます。西の山にかかる「秋河」(天の河)も長安が西方遠くにあることを思うと、政府から遠ざかっていることの暗喩と考えることができます。 

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