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ティェンタオの自由訳漢詩 2009

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 中唐6ー元結
   賊退示官吏        賊退いて官吏に示す          (後八句)

  今彼徴斂者     今  彼(か)の徴斂(ちょうれん)の者
  迫之如火煎     之(これ)に迫ること火煎(かせん)の如し
  誰能絶人命     誰(たれ)か能(よ)く人命(じんめい)を絶ちて
  以作時世賢     以て時世(じせい)の賢(けん)と作(な)らん
  思欲委符節     思欲(しよく)す  符節(ふせつ)を委(す)てて
  引竿自刺船     竿(さお)を引いて自ら船に刺(さ)し
  将家就魚麦     家を将(ひき)いて魚麦(ぎょばく)に就(つ)き
  帰老江湖辺     江湖(こうこ)の辺(ほとり)に帰老(きろう)せんことを

  ⊂訳⊃
          あの徴税の役人たちは
          火であぶるように取り立てる
          人の命を断ち切るようなことをして
          どうしていまの世の賢者となれよう
          そんなわけで  私は役人の身分を捨て
          釣り竿を手に  舟を漕ぎ出そう
          家族を連れて  田園にゆき
          江湖の辺りで  隠居したいと思うのだ


 ⊂ものがたり⊃ 後八句のはじめ四句は前段を説明する部分で、徴税の厳しさを詠います。そして、人の命を断ち切るようなことをして「以て時世の賢と作らん」と政府を批判します。つぎの四句は結びで、自分への反省です。思えば自分も税を取り立てる役人の仲間です。「符節」は役人の身分を示す札で、それを投げ棄てて家族とともに「魚麦」(田園)に隠居したいものだと思いを述べます。「竿」は楚辞「漁父」を踏まえており、釣り竿でしょう。
 時世を批判する詩は杜甫にもみられますが、元結は大暦の世になって社会詩の分野を切り開いた詩人として評価できます。銭起よりも直截で分かりやすい言葉を用いていますが、あからさまな政事批判には身を危うくする危険があります。
 大暦四年(769)、元結は母親の死をきっかけに官を辞し、郷里に隠棲しますが、大暦七年(772)に亡くなりました。享年五十四歳です。

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