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ティェンタオの自由訳漢詩 1996

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 盛唐90ー高適
   田家春望          田家の春望

  出門何所見     門を出(い)でて何の見る所ぞ
  春色満平蕪     春色(しゅんしょく)   平蕪(へいぶ)に満つ
  可歎無知己     歎(たん)ず可(べ)し  知己(ちき)無きを
  高陽一酒徒     高陽(こうよう)の一酒徒(いちしゅと)

  ⊂訳⊃
          わが家の門を出れば  何が見えるのか

          見渡す限りの平原に  春の息吹が満ちている

          嘆かわしいのは  おれを知る者がいないこと

          儒者ではないぞ  高陽に一酒徒だ


 ⊂ものがたり⊃ 高適(こうせき:707?ー765)は滄州勃海(河北省滄県)の人。若いころには定職につかず、遊侠の徒と交わったといいます。王之渙(おうしかん:4月3日のグログ参照)と親しんだと言われていますので、詩にも目覚めていたと思われます。
 詩題の「田家」(でんか)は田舎の家。「出門」は出世のためにわが家の門を出ることで、「知己」は自分の才能を理解する者の意味です。結句の「高陽の一酒徒」は漢の高祖劉邦が天下を取る前の故事を踏まえています。
 劉邦が軍を率いて西進していたとき、高陽(河南省杞県)の酈食其(れいいき)が劉邦に面会を求めました。取りつぎの者が儒者には会わないことになっていると告げると、酈食其は「おれは高陽の一酒徒だ。儒者ではない」と怒鳴りつけたといいます。その言葉を引いているのです。

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