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ティェンタオの自由訳漢詩 1992

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 盛唐86ー岑参
   封大夫破播仙凱歌       封大夫の播仙を破る凱歌 
   其四                其の四

  日落轅門鼓角鳴   日(ひ)は落ちて  轅門(えんもん)  鼓角(こかく)鳴り
  千群面縛出蕃城   千群(せんぐん)  面縛(めんばく)して蕃城(ばんじょう)を出づ
  洗兵魚海雲迎陣   兵を魚海(ぎょかい)に洗えば  雲  陣(じん)を迎え
  秣馬龍堆月照営   馬を龍堆(りょうたい)に秣(まぐさか)えば  月  営(えい)を照らす

  ⊂訳⊃
          日暮れの軍門で  鼓笛が鳴り

          夷狄の群れは   後ろ手になって城を出る

          魚海の水で武器を洗うと  雲は湧いて軍を迎え

          白龍堆で馬を休ませると  月は明るく陣営を照らす


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「封大夫」(ほうたいふ)は北庭節度使封常清(ほうじょうせい)とみられます。岑参は天宝十三載(754)には封常清の幕下に属していて、北庭都護府に赴任しています。そのときの作でしょう。詩は封常清が「播仙」(はせん:新疆ウイグル自治区孚遠県)を撃破したときに捧げた戦勝祝賀の詩で、六首連作の四首目です。
 軍が野外で宿営するとき、戦車を並べて囲いとするのは古い習わしで、その野営の門を「轅門」といいます。ここでは野営の門ではなく、駐屯地の軍門を雅して言うのでしょう。「面縛」はみずからを後ろ手にしばり、降伏することです。
 「魚海」は甘粛省の湖、「龍堆」は新疆ウイグル自治区の砂漠白龍堆のことで、ウルムチの近くの北庭都護府や播仙とは離れています。後半二句は凱旋して「兵」(武器)を洗い、馬をやすめる場所として象徴的に詠っているのであり、祝賀の詩としての形式を整えるものです。
 

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