盛唐83ー岑参
熱海行 送崔 熱海行 崔侍御の
侍御還京 京に還るを送る (前半八句)
側聞陰山胡児語 側聞(そくぶん)す 陰山(いんざん)の胡児(こじ)の語るを
西頭熱海水如煮 西頭(せいとう)の熱海(ねつかい) 水 煮(に)るが如し
海上衆鳥不敢飛 海上 衆鳥(しゅうちょう) 敢(あえ)て飛ばず
中有鯉魚長且肥 中(うち)に鯉魚(りぎょ)の 長くして且つ肥(こ)えたる有り
岸傍青草常不歇 岸傍(がんぼう)の青草(せいそう) 常に歇(か)れず
空中白雲遥旋滅 空中の白雲(はくうん) 遥かに旋(たちま)ち滅(めっ)す
蒸沙爍石燃虜雲 蒸沙(じょうさ) 爍石(しゃくせき) 虜雲(りょうん)を燃やし
沸浪炎波煎漢月 沸浪(ふつろう) 炎波(えんぱ) 漢月(かんげつ)を煎(に)る
⊂訳⊃
私は聞いた事がある 陰山の胡の若者が語るのを
西にある熱海の水は 煮えたぎるように熱いと
鳥たちは 湖上を飛ぼうとせず
湖中には 肥えた大きな鯉がいるらし
岸辺の青草は 枯れることなく茂り
大空の白雲は 遠くに流れてふと消える
蒸し熱い砂 焼けた石は異国の雲を燃え立たせ
湧き立つ浪 燃える波は漢の月を煮るようだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「熱海行」(ねつかいこう)は熱海の歌という意味で、安西都護府の西にある「熱海」(湖)について述べるものです。「崔侍御」(さいじぎょ)は崔という姓の侍御史のことで、二つの場合が考えられます。多分、殿中侍御史(正七品上)でしょう。
安西都護府の同僚の崔氏が御史台にもどるのを見送る詩で、はじめの四句は熱海のイメージを大まかに述べます。岑参は熱海を見ておらず、「胡児」(胡の若者)から聞いた話として描きます。つぎの四句ではより細かく熱海の状況を想像しますが、「虜雲」と「漢月」を出すことによって、異国と中国、つまり世界にかかわる問題であることを示唆します。
熱海行 送崔 熱海行 崔侍御の
侍御還京 京に還るを送る (前半八句)
側聞陰山胡児語 側聞(そくぶん)す 陰山(いんざん)の胡児(こじ)の語るを
西頭熱海水如煮 西頭(せいとう)の熱海(ねつかい) 水 煮(に)るが如し
海上衆鳥不敢飛 海上 衆鳥(しゅうちょう) 敢(あえ)て飛ばず
中有鯉魚長且肥 中(うち)に鯉魚(りぎょ)の 長くして且つ肥(こ)えたる有り
岸傍青草常不歇 岸傍(がんぼう)の青草(せいそう) 常に歇(か)れず
空中白雲遥旋滅 空中の白雲(はくうん) 遥かに旋(たちま)ち滅(めっ)す
蒸沙爍石燃虜雲 蒸沙(じょうさ) 爍石(しゃくせき) 虜雲(りょうん)を燃やし
沸浪炎波煎漢月 沸浪(ふつろう) 炎波(えんぱ) 漢月(かんげつ)を煎(に)る
⊂訳⊃
私は聞いた事がある 陰山の胡の若者が語るのを
西にある熱海の水は 煮えたぎるように熱いと
鳥たちは 湖上を飛ぼうとせず
湖中には 肥えた大きな鯉がいるらし
岸辺の青草は 枯れることなく茂り
大空の白雲は 遠くに流れてふと消える
蒸し熱い砂 焼けた石は異国の雲を燃え立たせ
湧き立つ浪 燃える波は漢の月を煮るようだ
⊂ものがたり⊃ 詩題の「熱海行」(ねつかいこう)は熱海の歌という意味で、安西都護府の西にある「熱海」(湖)について述べるものです。「崔侍御」(さいじぎょ)は崔という姓の侍御史のことで、二つの場合が考えられます。多分、殿中侍御史(正七品上)でしょう。
安西都護府の同僚の崔氏が御史台にもどるのを見送る詩で、はじめの四句は熱海のイメージを大まかに述べます。岑参は熱海を見ておらず、「胡児」(胡の若者)から聞いた話として描きます。つぎの四句ではより細かく熱海の状況を想像しますが、「虜雲」と「漢月」を出すことによって、異国と中国、つまり世界にかかわる問題であることを示唆します。