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ティェンタオの自由訳漢詩 1989

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 盛唐83ー岑参
   熱海行 送崔          熱海行 崔侍御の
   侍御還京             京に還るを送る        (前半八句)

  側聞陰山胡児語   側聞(そくぶん)す  陰山(いんざん)の胡児(こじ)の語るを
  西頭熱海水如煮   西頭(せいとう)の熱海(ねつかい)  水  煮(に)るが如し
  海上衆鳥不敢飛   海上  衆鳥(しゅうちょう)  敢(あえ)て飛ばず
  中有鯉魚長且肥   中(うち)に鯉魚(りぎょ)の  長くして且つ肥(こ)えたる有り
  岸傍青草常不歇   岸傍(がんぼう)の青草(せいそう)  常に歇(か)れず
  空中白雲遥旋滅   空中の白雲(はくうん)  遥かに旋(たちま)ち滅(めっ)す
  蒸沙爍石燃虜雲   蒸沙(じょうさ)   爍石(しゃくせき)  虜雲(りょうん)を燃やし
  沸浪炎波煎漢月   沸浪(ふつろう)  炎波(えんぱ)    漢月(かんげつ)を煎(に)る

  ⊂訳⊃
          私は聞いた事がある  陰山の胡の若者が語るのを
          西にある熱海の水は  煮えたぎるように熱いと
          鳥たちは     湖上を飛ぼうとせず
          湖中には     肥えた大きな鯉がいるらし
          岸辺の青草は  枯れることなく茂り
          大空の白雲は  遠くに流れてふと消える
          蒸し熱い砂    焼けた石は異国の雲を燃え立たせ
          湧き立つ浪    燃える波は漢の月を煮るようだ


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「熱海行」(ねつかいこう)は熱海の歌という意味で、安西都護府の西にある「熱海」(湖)について述べるものです。「崔侍御」(さいじぎょ)は崔という姓の侍御史のことで、二つの場合が考えられます。多分、殿中侍御史(正七品上)でしょう。
 安西都護府の同僚の崔氏が御史台にもどるのを見送る詩で、はじめの四句は熱海のイメージを大まかに述べます。岑参は熱海を見ておらず、「胡児」(胡の若者)から聞いた話として描きます。つぎの四句ではより細かく熱海の状況を想像しますが、「虜雲」と「漢月」を出すことによって、異国と中国、つまり世界にかかわる問題であることを示唆します。 

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