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ティェンタオの自由訳漢詩 1987

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 盛唐81ー岑参
    経火山            火山を経

  火山今始見     火山  今  始めて見る
  突兀蒲昌東     突兀(とつこつ)たり  蒲昌(ほしょう)の東
  赤焔焼虜雲     赤焔(せきえん)  虜雲(りょうん)を焼き
  炎氛蒸塞空     炎氛(えんぷん)  塞空(さいくう)を蒸(む)す
  不知陰陽炭     知(し)らず  陰陽(いんよう)の炭(たん)
  何独燃此中     何ぞ独り此の中(うち)に燃ゆる
  我来厳冬時     我れ来たるは厳冬(げんとう)の時なるに
  山下多炎風     山下(さんか)に炎風(えんぷう)多し
  人馬尽汗流     人馬(じんば)   尽(ことごと)く汗(あせ)流る
  孰知造化功     孰(たれ)か知らん  造化(ぞうか)の功(こう)

  ⊂訳⊃
          名高い火焔山を  はじめて見た
          蒲昌の東に    高く聳えている
          まっかな焔が   異国の空を焼きつくし
          燃え上がる炎は  国境の空を蒸すようだ
          天地の中心にあるという炭火は
          どうして   ここだけで燃えているのか
          私が来たのは   冬の最中なのに
          山麓では  熱風が吹き荒れている
          人も馬も  共に汗を流し
          これが造物主の仕業だと  どうして信じられようか


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「火山」は火焔山(新疆ウイグル自治区トルファンの東)のことで、安西都護府へむかう路の北、すぐ近くに横たわっています。火山ではなく、赤い山肌が浸食されてむき出しの筋になり、陽に照らされて全体が炎のように見えます。
 はじめの四句で火焔山を見た驚きを詠います。「蒲昌」はトルファンのことです。つぎの四句は火焔山の不思議を空想的に解釈しようとするもので、「陰陽の炭」は天地の中心にある炭火という意味です。地球の奥にマグマが存在しているという知識があったようです。
 厳冬の季節であるのに暑いというのは、いまではトルファン盆地が海水面以下の低地であるので、昼間は気温の上昇が激しいことが知られています。岑参は「陰陽炭」のせいで暑いのだろうと解して、「孰か知らん 造化の功」と結びます。

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