盛唐81ー岑参
経火山 火山を経
火山今始見 火山 今 始めて見る
突兀蒲昌東 突兀(とつこつ)たり 蒲昌(ほしょう)の東
赤焔焼虜雲 赤焔(せきえん) 虜雲(りょうん)を焼き
炎氛蒸塞空 炎氛(えんぷん) 塞空(さいくう)を蒸(む)す
不知陰陽炭 知(し)らず 陰陽(いんよう)の炭(たん)
何独燃此中 何ぞ独り此の中(うち)に燃ゆる
我来厳冬時 我れ来たるは厳冬(げんとう)の時なるに
山下多炎風 山下(さんか)に炎風(えんぷう)多し
人馬尽汗流 人馬(じんば) 尽(ことごと)く汗(あせ)流る
孰知造化功 孰(たれ)か知らん 造化(ぞうか)の功(こう)
⊂訳⊃
名高い火焔山を はじめて見た
蒲昌の東に 高く聳えている
まっかな焔が 異国の空を焼きつくし
燃え上がる炎は 国境の空を蒸すようだ
天地の中心にあるという炭火は
どうして ここだけで燃えているのか
私が来たのは 冬の最中なのに
山麓では 熱風が吹き荒れている
人も馬も 共に汗を流し
これが造物主の仕業だと どうして信じられようか
⊂ものがたり⊃ 詩題の「火山」は火焔山(新疆ウイグル自治区トルファンの東)のことで、安西都護府へむかう路の北、すぐ近くに横たわっています。火山ではなく、赤い山肌が浸食されてむき出しの筋になり、陽に照らされて全体が炎のように見えます。
はじめの四句で火焔山を見た驚きを詠います。「蒲昌」はトルファンのことです。つぎの四句は火焔山の不思議を空想的に解釈しようとするもので、「陰陽の炭」は天地の中心にある炭火という意味です。地球の奥にマグマが存在しているという知識があったようです。
厳冬の季節であるのに暑いというのは、いまではトルファン盆地が海水面以下の低地であるので、昼間は気温の上昇が激しいことが知られています。岑参は「陰陽炭」のせいで暑いのだろうと解して、「孰か知らん 造化の功」と結びます。
経火山 火山を経
火山今始見 火山 今 始めて見る
突兀蒲昌東 突兀(とつこつ)たり 蒲昌(ほしょう)の東
赤焔焼虜雲 赤焔(せきえん) 虜雲(りょうん)を焼き
炎氛蒸塞空 炎氛(えんぷん) 塞空(さいくう)を蒸(む)す
不知陰陽炭 知(し)らず 陰陽(いんよう)の炭(たん)
何独燃此中 何ぞ独り此の中(うち)に燃ゆる
我来厳冬時 我れ来たるは厳冬(げんとう)の時なるに
山下多炎風 山下(さんか)に炎風(えんぷう)多し
人馬尽汗流 人馬(じんば) 尽(ことごと)く汗(あせ)流る
孰知造化功 孰(たれ)か知らん 造化(ぞうか)の功(こう)
⊂訳⊃
名高い火焔山を はじめて見た
蒲昌の東に 高く聳えている
まっかな焔が 異国の空を焼きつくし
燃え上がる炎は 国境の空を蒸すようだ
天地の中心にあるという炭火は
どうして ここだけで燃えているのか
私が来たのは 冬の最中なのに
山麓では 熱風が吹き荒れている
人も馬も 共に汗を流し
これが造物主の仕業だと どうして信じられようか
⊂ものがたり⊃ 詩題の「火山」は火焔山(新疆ウイグル自治区トルファンの東)のことで、安西都護府へむかう路の北、すぐ近くに横たわっています。火山ではなく、赤い山肌が浸食されてむき出しの筋になり、陽に照らされて全体が炎のように見えます。
はじめの四句で火焔山を見た驚きを詠います。「蒲昌」はトルファンのことです。つぎの四句は火焔山の不思議を空想的に解釈しようとするもので、「陰陽の炭」は天地の中心にある炭火という意味です。地球の奥にマグマが存在しているという知識があったようです。
厳冬の季節であるのに暑いというのは、いまではトルファン盆地が海水面以下の低地であるので、昼間は気温の上昇が激しいことが知られています。岑参は「陰陽炭」のせいで暑いのだろうと解して、「孰か知らん 造化の功」と結びます。