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ティェンタオの自由訳漢詩 1979

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 盛唐73ー李頎
    題盧五旧居          盧五の旧居に題す

  物在人亡無見期   物在れども人亡くして見(まみ)ゆる期(き)無し
  ?庭繋馬不勝愁   閑庭(かんてい)に馬を繋いで愁(かな)しみに勝(た)えず
  窓前緑竹生空地   窓前(そうぜん)の緑竹(りょくちく)  空地(くうち)に生じ
  門外青山如旧時   門外(もんがい)の青山(せいざん)  旧時(きゅうじ)の如し
  悵望秋天鳴墜葉   悵望(ちょうぼう)する秋天(しゅうてん)  墜葉(ついよう)鳴り
  鑽岏枯柳宿寒鴟   鑽岏(さんがん)たる枯柳(こりゅう)  寒鴟(かんし)宿(やど)る
  憶君涙落東流水   君を憶(おも)えば涙落つ  東流(とうりゅう)の水
  歳歳花開知為誰   歳歳(さいさい)花開くも   知んぬ誰(た)が為(ため)ぞや

    〇 六句目の 鑽 は外字になるので同音の字に変えててあります。
       本来は 金扁 ではなく 山扁です。

  ⊂訳⊃
          物は変わらずに在るが 人は死ねば会うときはない
          静かな庭に馬を繋いで  私は悲しみに沈む
          窓前のみどりの竹は   踏む人のない土地に生え
          門外のみどりの山は   在りし日の姿のままだ
          悲しみつつ仰ぐ秋空に  落ち葉の音
          天をつく柳の木には   みそさざいの巣
          君を想えば涙は流れ   帰らぬ川の水となり
          年ごとに花は咲いても  誰のために咲く花か


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「盧五」(ろご)は別に「司勲盧員外に寄す」という詩があり、同輩の詩人盧象(ろしょう)ではないかとされていますが、詳細は不明です。盧五が死んだあと家を訪れ、壁に書きつけた詩です。
 首聯の二句は序の部分で、「物在れども」は物が変わりなく存在すること。盧五の家の「閑庭」(静かな庭)に馬を繋いで悲しみに堪えずと詠います。
 中四句二聯の対句は、庭の景を描いて悲しみを表現します。「空地」は人けのない土地、まず庭の竹を見て、遠くの山を見ます。ついで秋空に落ち葉の散る音を聞き、葉の落ちた柳の大木に「鴟」(みそさざい)が巣を架けていると詠います。二連とも整った対句です。
 尾聯は結びで、「東流の水」(中国の太河)が東へ流れ、海に注いで帰らないことを詠い、年ごとに花は咲いても見る人はすでにいないと歎きます。詩からは不遇の人生が窺われ、天宝十載(751)に亡くなりました。享年は六十二歳くらいです。 

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