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ティェンタオの自由訳漢詩 1970

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 盛唐64ー賈至
   春思 其一              春思  其の一

  草色青青柳色黄   草色(そうしょく)青青(せいせい)として  柳色(りゅうしょく)黄なり
  桃花歴乱李花香   桃花(とうか)歴乱(れきらん)として    李花(りか)香(かんば)し
  東風不為吹愁去   東風(とうふう)   為(ため)に愁いを吹き去らず
  春日偏能惹恨長   春日(しゅんじつ)  偏(ひと)えに能(よ)く恨(うら)みを惹(ひ)いて長し

  ⊂訳⊃
          若草は青々と茂り  柳の新芽はこがね色

          桃の花は咲き乱れ  李の花は匂い立つ

          だが 春風は     愁いを払ってはくれず

          春の日に私の胸は  尽きぬ嘆きで一杯になる


 ⊂ものがたり⊃ 開元二十一年(733)から開元二十四年(736)までの四年間は、張九齢と李林甫(りりんぽ)が政権を争った期間にあたります。進士出身と恩陰系の権力闘争です。開元二十五年(737)に張九齢は荊州(湖北省江陵県)長史に左遷され、進士出身者の政権は終わりを告げます。
 開元二十三年(735)に三人の詩人が進士に及第して流入(官吏になること)します。賈至と李華と李頎です。賈至(かし:718ー772)は洛陽の人。十八歳で進士に及第し、王維らと詩の贈答もしました。
 詩題の「春思」(しゅんし)は楽府題です。起承の二句で春の繚乱を詠い、転結句で春の日の感傷を詠います。其の二の詩によって詩の主人公は女性と解されますので、女性に成り代わって詠っている詩とも考えられます。とすれは、起承句は女性たちが自分の姿を「私たちはこんなですよ」と言っていることになります。

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