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ティェンタオの自由訳漢詩 1968

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 盛唐62ー劉長卿
   重送裴郎中           重ねて裴郎中の吉州
   貶吉州              に貶せらるるを送る

  猿啼客散暮江頭   猿(さる)啼(な)き  客は散ず  暮江(ぼこう)の頭(ほとり)
  人自傷心水自流   人は自(おのず)から心を傷ましめ  水は自から流る
  同作逐臣君更遠   同(とも)に逐臣(ちくしん)と作(な)りて 君 更に遠し
  西山万里一孤舟   西山万里(せいざんばんり)   一孤舟(いちこしゅう)

  ⊂訳⊃
          暮れ方の川のほとりで  猿は鳴き二人は別れる

          人は悲しむ心を持つが  水は無心に流れていく

          同じ流罪の身であるが  君と別れてさらに遠く

          西山万里のかなたへと  私は消えゆく一孤舟


 ⊂ものがたり⊃ 劉長卿は転運使関係の仕事をしていたようですが、誣奏(ぶそう)によって姑蘇(江蘇省蘇州市)の獄に繋がれ、潘州南巴(広東省茂名県の東南)の県尉に流されます。詩題の「裴郎中」(はいろうちゅう)は伝不明です。劉長卿が南巴に流されるとき、途中で「吉州」(江西省吉安県)に流される裴郎中といっしょになりました。やがて別れるときがきて、渡津で別れの詩を贈りました。
 起句の「 客は散ず」は旅人である二人が別れることです。承句は人は有情であるが水は無情、性質を異にしているので、川の水に人の悲しみが分かるわけはないと歎くのです。劉長卿の流謫地南巴は吉州よりも遥か南です。だから転句は、同じ逐臣だけど、わたしは「君」(裴郎中)から離れてさらに遠い地へ行くという意味になります。そして結びで、自分の姿を「西山万里」の彼方へゆく「一孤舟」に喩えて詠嘆します。

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