盛唐57ー孟浩然
宿建徳江 建徳江に宿す
移舟泊煙渚 舟を移して煙渚(えんしょ)に泊(はく)し
日暮客愁新 日暮(にちぼ) 客愁(かくしゅう)新たなり
野曠天低樹 野(の)曠(ひろ)くして 天 樹(き)に低(た)れ
江清月近人 江(こう)清(きよ)くして 月 人に近し
⊂訳⊃
舟を岸辺に寄せ 薄靄の漂う中洲に泊まる
日暮れになって 旅の悲しみが湧き起こる
野は遥々と広く 空は樹々の上に垂れている
流れは清らかで 月が近くに寄って来るようだ
⊂ものがたり⊃ 襄陽で隠棲していたとき、荊州(湖北省江陵県)長史に流されてきた張九齢に仕えますが、それも永くはつづかず、辞任して江南を旅します。詩題の「建徳江」(けんとくこう)は長江の下流付近を流れる川とも、銭塘江(浙江省)の中流部ともいいます。寂しい岸辺に舟を泊めたときの一夜の感懐です。
「煙渚」の渚は中洲をいうことが多く、靄に包まれた中洲に舟を繋いだのでしょう。後半は舟上からの眺めです。まず野原の方を見ると、「天 樹に低れ」ており、作者の鬱屈した心情の比喩ともなっています。
川の流れに目を移すと、「月 人に近し」とあります。流れに影を映した月が自分に近づいて来るように思われた。そう詠うことによって、孤独な自分の境遇に同情する人を求めている。そんな気持ちを比喩的に表現したとも考えられます。
宿建徳江 建徳江に宿す
移舟泊煙渚 舟を移して煙渚(えんしょ)に泊(はく)し
日暮客愁新 日暮(にちぼ) 客愁(かくしゅう)新たなり
野曠天低樹 野(の)曠(ひろ)くして 天 樹(き)に低(た)れ
江清月近人 江(こう)清(きよ)くして 月 人に近し
⊂訳⊃
舟を岸辺に寄せ 薄靄の漂う中洲に泊まる
日暮れになって 旅の悲しみが湧き起こる
野は遥々と広く 空は樹々の上に垂れている
流れは清らかで 月が近くに寄って来るようだ
⊂ものがたり⊃ 襄陽で隠棲していたとき、荊州(湖北省江陵県)長史に流されてきた張九齢に仕えますが、それも永くはつづかず、辞任して江南を旅します。詩題の「建徳江」(けんとくこう)は長江の下流付近を流れる川とも、銭塘江(浙江省)の中流部ともいいます。寂しい岸辺に舟を泊めたときの一夜の感懐です。
「煙渚」の渚は中洲をいうことが多く、靄に包まれた中洲に舟を繋いだのでしょう。後半は舟上からの眺めです。まず野原の方を見ると、「天 樹に低れ」ており、作者の鬱屈した心情の比喩ともなっています。
川の流れに目を移すと、「月 人に近し」とあります。流れに影を映した月が自分に近づいて来るように思われた。そう詠うことによって、孤独な自分の境遇に同情する人を求めている。そんな気持ちを比喩的に表現したとも考えられます。