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ティェンタオの自由訳漢詩 1963

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 盛唐57ー孟浩然
   宿建徳江           建徳江に宿す

  移舟泊煙渚     舟を移して煙渚(えんしょ)に泊(はく)し
  日暮客愁新     日暮(にちぼ)  客愁(かくしゅう)新たなり
  野曠天低樹     野(の)曠(ひろ)くして  天  樹(き)に低(た)れ
  江清月近人     江(こう)清(きよ)くして  月  人に近し

  ⊂訳⊃
          舟を岸辺に寄せ  薄靄の漂う中洲に泊まる

          日暮れになって  旅の悲しみが湧き起こる

          野は遥々と広く  空は樹々の上に垂れている

          流れは清らかで  月が近くに寄って来るようだ


 ⊂ものがたり⊃ 襄陽で隠棲していたとき、荊州(湖北省江陵県)長史に流されてきた張九齢に仕えますが、それも永くはつづかず、辞任して江南を旅します。詩題の「建徳江」(けんとくこう)は長江の下流付近を流れる川とも、銭塘江(浙江省)の中流部ともいいます。寂しい岸辺に舟を泊めたときの一夜の感懐です。
 「煙渚」の渚は中洲をいうことが多く、靄に包まれた中洲に舟を繋いだのでしょう。後半は舟上からの眺めです。まず野原の方を見ると、「天 樹に低れ」ており、作者の鬱屈した心情の比喩ともなっています。
 川の流れに目を移すと、「月 人に近し」とあります。流れに影を映した月が自分に近づいて来るように思われた。そう詠うことによって、孤独な自分の境遇に同情する人を求めている。そんな気持ちを比喩的に表現したとも考えられます。

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