盛唐56ー孟浩然
宿業師山房 業師の山房に宿して
期丁大不至 丁大を期するも至らず
夕陽度西嶺 夕陽(せきよう) 西嶺(せいれい)に度(わた)り
群壑倏已暝 群壑(ぐんがく) 倏(たちま)ち已(すで)に暝(くら)し
松月生夜涼 松月(しょうげつ) 夜涼(やりょう)を生じ
風泉満清聴 風泉(ふうせん) 清聴(せいちょう)を満たす
樵人帰欲尽 樵人(しょうじん) 帰りて尽(つ)きんと欲し
煙鳥棲初定 煙鳥(えんちょう) 棲(す)みて初めて定(さだ)まる
之子期末来 之(こ)の子(こ) 期して末(いま)だ来たらず
孤琴候蘿逕 孤琴(こきん) 蘿逕(らけい)に候(ま)つ
⊂訳⊃
日暮の太陽は 西の山並を過ぎてゆき
辺りの谷間は 急速に暗くなる
松陰の月は 夜の涼しさを呼び覚まし
風に吹かれて 泉は爽やかな音を立てる
樵たちは 家路についていなくなり
夕靄のなか 鳥は塒で寝静まる
丁君は来る予定だが まだ来ない
だから私は琴を抱き 蔦の小径で待っている
⊂ものがたり⊃ 詩題の「業師」(ぎょうし)は僧侶の名。その山寺に宿泊して「丁大」(ていだい)を待っているときの詩です。詩中に「之の子」とあるので、丁大は年少の友人でしょう。はじめの二句で夕陽の動きを描き、時刻を設定します。
中四句は二組の対句からなり、月と泉、樵と鳥の動きで日暮れのようすを描きます。結びは孟浩然の優しい心根を示しており、この句はマーラーの「大地の歌」のフィナーレ、第六楽章の歌詞に取り入れられていることで、欧米でも有名です。
宿業師山房 業師の山房に宿して
期丁大不至 丁大を期するも至らず
夕陽度西嶺 夕陽(せきよう) 西嶺(せいれい)に度(わた)り
群壑倏已暝 群壑(ぐんがく) 倏(たちま)ち已(すで)に暝(くら)し
松月生夜涼 松月(しょうげつ) 夜涼(やりょう)を生じ
風泉満清聴 風泉(ふうせん) 清聴(せいちょう)を満たす
樵人帰欲尽 樵人(しょうじん) 帰りて尽(つ)きんと欲し
煙鳥棲初定 煙鳥(えんちょう) 棲(す)みて初めて定(さだ)まる
之子期末来 之(こ)の子(こ) 期して末(いま)だ来たらず
孤琴候蘿逕 孤琴(こきん) 蘿逕(らけい)に候(ま)つ
⊂訳⊃
日暮の太陽は 西の山並を過ぎてゆき
辺りの谷間は 急速に暗くなる
松陰の月は 夜の涼しさを呼び覚まし
風に吹かれて 泉は爽やかな音を立てる
樵たちは 家路についていなくなり
夕靄のなか 鳥は塒で寝静まる
丁君は来る予定だが まだ来ない
だから私は琴を抱き 蔦の小径で待っている
⊂ものがたり⊃ 詩題の「業師」(ぎょうし)は僧侶の名。その山寺に宿泊して「丁大」(ていだい)を待っているときの詩です。詩中に「之の子」とあるので、丁大は年少の友人でしょう。はじめの二句で夕陽の動きを描き、時刻を設定します。
中四句は二組の対句からなり、月と泉、樵と鳥の動きで日暮れのようすを描きます。結びは孟浩然の優しい心根を示しており、この句はマーラーの「大地の歌」のフィナーレ、第六楽章の歌詞に取り入れられていることで、欧米でも有名です。