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ティェンタオの自由訳漢詩 1962

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 盛唐56ー孟浩然
   宿業師山房         業師の山房に宿して
   期丁大不至         丁大を期するも至らず

  夕陽度西嶺     夕陽(せきよう)   西嶺(せいれい)に度(わた)り
  群壑倏已暝     群壑(ぐんがく)   倏(たちま)ち已(すで)に暝(くら)し
  松月生夜涼     松月(しょうげつ)  夜涼(やりょう)を生じ
  風泉満清聴     風泉(ふうせん)  清聴(せいちょう)を満たす
  樵人帰欲尽     樵人(しょうじん)  帰りて尽(つ)きんと欲し
  煙鳥棲初定     煙鳥(えんちょう)  棲(す)みて初めて定(さだ)まる
  之子期末来     之(こ)の子(こ)   期して末(いま)だ来たらず
  孤琴候蘿逕     孤琴(こきん)    蘿逕(らけい)に候(ま)つ

  ⊂訳⊃
          日暮の太陽は  西の山並を過ぎてゆき
          辺りの谷間は  急速に暗くなる
          松陰の月は   夜の涼しさを呼び覚まし
          風に吹かれて  泉は爽やかな音を立てる
          樵たちは     家路についていなくなり
          夕靄のなか   鳥は塒で寝静まる
          丁君は来る予定だが  まだ来ない
          だから私は琴を抱き  蔦の小径で待っている


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「業師」(ぎょうし)は僧侶の名。その山寺に宿泊して「丁大」(ていだい)を待っているときの詩です。詩中に「之の子」とあるので、丁大は年少の友人でしょう。はじめの二句で夕陽の動きを描き、時刻を設定します。
 中四句は二組の対句からなり、月と泉、樵と鳥の動きで日暮れのようすを描きます。結びは孟浩然の優しい心根を示しており、この句はマーラーの「大地の歌」のフィナーレ、第六楽章の歌詞に取り入れられていることで、欧米でも有名です。 

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