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ティェンタオの自由訳漢詩 1960

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 盛唐54ー孟浩然
   過故人荘            故人の荘に過る

  故人具鶏黍     故人(こじん)   鶏黍(けいしょ)を具(そな)え
  邀我至田家     我れを邀(むか)えて田家(でんか)に至らしむ
  緑樹村辺合     緑樹(りょくじゅ)  村辺(そんぺん)に合し
  青山郭外斜     青山(せいざん)  郭外(かくがい)に斜めなり
  開軒面場圃     軒(まど)を開いて場圃(じょうほ)に面(めん)し
  把酒話桑麻     酒を把(と)って桑麻(そうま)を話(かた)る
  待到重陽日     重陽(ちょうよう)の日に到るを待って
  還来就菊花     還(ま)た来たって 菊花(きくか)に就(つ)かん

  ⊂訳⊃
          親しい友が  鶏と黍の料理を用意して
          村の別荘へ  招いてくれた
          緑の樹々は  村をめぐってこんもり茂り
          青い山脈が  郭の向こうに斜めにみえる
          窓を開いて  目の前の畑を眺め
          酒を酌んで  桑や麻のことを語り合う
          重陽節には  またお邪魔して
          菊の花を   いっしょに観賞したいものだ


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「故人」は親友、「荘」は別荘のことで、二句目の「田家」は田舎にある家という意味でしょう。はじめの二句は事情の説明。「鶏黍を具え」は鶏ときびめしのことで、心づくしのご馳走をいいます。
 中四句は二組の対句になっており、まず別荘からの眺め。「緑樹 村辺に合し 青山 郭外に斜めなり」は名句として有名です。「郭」は村を取り巻く牆壁のことで、城壁のように高くないので、その向こうに山の尾根が傾いて見えるのです。つぎの対句は窓辺でくつろぐ二人の姿、陶淵明の詩の風情があります。
 結びの二句は相手への挨拶。九月九日の重陽の節句は菊の花咲く季節で、菊酒を飲むのが習わしでした。その日にまたお邪魔したいと感謝の気持ちを表します。
     

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