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ティェンタオの自由訳漢詩 1958

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 盛唐52ー孟浩然
   留別王維            王維に留別す

  寂寂竟何待     寂寂(せきせき)   竟(つい)に何をか待たん
  朝朝空自帰     朝朝(ちょうちょう)  空(むな)しく自ら帰る
  欲尋芳草去     芳草(ほうそう)を尋ねて去らんと欲するも
  惜与故人違     故人(こじん)と違(たが)わんことを惜(おし)む
  当路誰相仮     当路(とうろ)  誰か相仮(あいか)さん
  知音世所稀     知音(ちいん)  世に稀(まれ)なる所
  秖応守索寞     秖(た)だ応(まさ)に索寞(さくばく)を守るべし
  還掩故園扉     還(かえ)って故園(こえん)の扉を掩(とざ)さん

  ⊂訳⊃
          落ちぶれて  期待もなくなり
          毎日 毎日  空しく家に帰るだけ
          友を求めて  立ち去ろうと思うが
          親しい君と  別れるのが残念だ
          官の要人で  力を貸す者もなく
          いまの世に  私の理解者はいない
          今後はただ  もの寂しい心を抱いて
          故郷に帰り  わが家の門を閉ざしていよう


 ⊂ものがたり⊃ 都では王維らと親交を結びました。王維は孟浩然より十歳ほど年少で、そのころは洛陽付近の任地を転々としていました。詩題の「留別」(りゅうべつ)は旅立つ者が残る者に詩を贈ることです。詩は前後四句ずつに分けて読むことができます。
 はじめに対句で空しく家に帰るだけの毎日を詠い、郷里に帰ろうと思うが「故人」(王維のこと)と別れるのが残念と詠います。「芳草」は楚辞で賢者をいい、楚地(郷里襄陽)の友人といった意味でしょう。
 後半ではまず、帰郷の理由を対人関係で述べます。「知音」には故事があり、春秋時代に伯牙(はくが)という琴の名手がいて、友人の鍾子期(しょうしき)は伯牙の曲をよく理解しました。そのことから「知音」は理解し合える親友の意味になります。結びでは、「索寞」(もの寂しい状態)を心に抱いて故郷に帰り、隠棲しようと思うと述べます。

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