盛唐52ー孟浩然
留別王維 王維に留別す
寂寂竟何待 寂寂(せきせき) 竟(つい)に何をか待たん
朝朝空自帰 朝朝(ちょうちょう) 空(むな)しく自ら帰る
欲尋芳草去 芳草(ほうそう)を尋ねて去らんと欲するも
惜与故人違 故人(こじん)と違(たが)わんことを惜(おし)む
当路誰相仮 当路(とうろ) 誰か相仮(あいか)さん
知音世所稀 知音(ちいん) 世に稀(まれ)なる所
秖応守索寞 秖(た)だ応(まさ)に索寞(さくばく)を守るべし
還掩故園扉 還(かえ)って故園(こえん)の扉を掩(とざ)さん
⊂訳⊃
落ちぶれて 期待もなくなり
毎日 毎日 空しく家に帰るだけ
友を求めて 立ち去ろうと思うが
親しい君と 別れるのが残念だ
官の要人で 力を貸す者もなく
いまの世に 私の理解者はいない
今後はただ もの寂しい心を抱いて
故郷に帰り わが家の門を閉ざしていよう
⊂ものがたり⊃ 都では王維らと親交を結びました。王維は孟浩然より十歳ほど年少で、そのころは洛陽付近の任地を転々としていました。詩題の「留別」(りゅうべつ)は旅立つ者が残る者に詩を贈ることです。詩は前後四句ずつに分けて読むことができます。
はじめに対句で空しく家に帰るだけの毎日を詠い、郷里に帰ろうと思うが「故人」(王維のこと)と別れるのが残念と詠います。「芳草」は楚辞で賢者をいい、楚地(郷里襄陽)の友人といった意味でしょう。
後半ではまず、帰郷の理由を対人関係で述べます。「知音」には故事があり、春秋時代に伯牙(はくが)という琴の名手がいて、友人の鍾子期(しょうしき)は伯牙の曲をよく理解しました。そのことから「知音」は理解し合える親友の意味になります。結びでは、「索寞」(もの寂しい状態)を心に抱いて故郷に帰り、隠棲しようと思うと述べます。
留別王維 王維に留別す
寂寂竟何待 寂寂(せきせき) 竟(つい)に何をか待たん
朝朝空自帰 朝朝(ちょうちょう) 空(むな)しく自ら帰る
欲尋芳草去 芳草(ほうそう)を尋ねて去らんと欲するも
惜与故人違 故人(こじん)と違(たが)わんことを惜(おし)む
当路誰相仮 当路(とうろ) 誰か相仮(あいか)さん
知音世所稀 知音(ちいん) 世に稀(まれ)なる所
秖応守索寞 秖(た)だ応(まさ)に索寞(さくばく)を守るべし
還掩故園扉 還(かえ)って故園(こえん)の扉を掩(とざ)さん
⊂訳⊃
落ちぶれて 期待もなくなり
毎日 毎日 空しく家に帰るだけ
友を求めて 立ち去ろうと思うが
親しい君と 別れるのが残念だ
官の要人で 力を貸す者もなく
いまの世に 私の理解者はいない
今後はただ もの寂しい心を抱いて
故郷に帰り わが家の門を閉ざしていよう
⊂ものがたり⊃ 都では王維らと親交を結びました。王維は孟浩然より十歳ほど年少で、そのころは洛陽付近の任地を転々としていました。詩題の「留別」(りゅうべつ)は旅立つ者が残る者に詩を贈ることです。詩は前後四句ずつに分けて読むことができます。
はじめに対句で空しく家に帰るだけの毎日を詠い、郷里に帰ろうと思うが「故人」(王維のこと)と別れるのが残念と詠います。「芳草」は楚辞で賢者をいい、楚地(郷里襄陽)の友人といった意味でしょう。
後半ではまず、帰郷の理由を対人関係で述べます。「知音」には故事があり、春秋時代に伯牙(はくが)という琴の名手がいて、友人の鍾子期(しょうしき)は伯牙の曲をよく理解しました。そのことから「知音」は理解し合える親友の意味になります。結びでは、「索寞」(もの寂しい状態)を心に抱いて故郷に帰り、隠棲しようと思うと述べます。