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ティェンタオの自由訳漢詩 1955

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 盛唐49ー孟浩然
   望洞庭湖           洞庭湖を望み
   贈張丞相           張丞相に贈る

  八月湖水平     八月  湖水(こすい)平らかに
  涵虚混太清     虚(きょ)を涵(ひた)して太清(たいせい)に混(こん)ず
  気蒸雲夢沢     気は蒸(む)す   雲夢(うんぼう)の沢(たく)
  波撼岳陽城     波は撼(ゆる)がす  岳陽(がくよう)の城
  欲済無舟楫     済(わた)らんと欲するも舟楫(しゅうしゅう)無く
  端居恥聖明     端居(たんきょ)  聖明(せいめい)に恥づ
  坐観垂釣者     坐(そぞ)ろに釣を垂るる者を観(み)て
  徒有羨魚情     徒(いたず)らに 魚(うお)を羨(うらや)むの情(じょう)有り

  ⊂訳⊃
          八月の洞庭湖は  満々と水をたたえ
          虚空に繋がって  天と交じり合う
          雲夢の沢に     靄は立ちこめ
          打ち寄せる波は  岳陽城を揺るがす
          渡ろうと思うが    舟も楫もなく
          無為に過ごす身を 天子に恥じる
          岸辺の釣り人を  しみじみ眺めていると
          釣られる魚が    無性に羨ましくなる


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「張丞相」には岳州刺史に左遷された張説とする説と荊州長史に貶謫された張九齢とする二説があります。詩は前後二つに分けて読むことができ、前半は洞庭湖の叙景です。招かれて洞庭湖に遊び、湖畔の宴席で披露した詩でしょう。
 「雲夢沢」は洞庭湖の北側にあった湿地(古代の湖の跡)で、「岳陽城」(湖南省岳陽市)から大きく左右(南と北)を眺めていることになります。後半は一転して官に仕えたい気持ちの表白、就職運動です。「舟楫」は賢い臣下の喩えで、それが無いというのは自分を推薦してくれる高官がいないという意味です。そのため「端居」(平生のまま過ごす)している自分を天子に恥じると詠います。
 結びの二句は比喩を用いていますが、自分を推挙してほしいという気持ちをはっきりと伝えます。「魚を羨むの情」、つまり釣り人(人材を推挙する人)に釣られる魚が羨ましいと訴えるのです。
 孟浩然が荊州で張九齢に仕えたことから、「張丞相」を張九齢とする説がありますが、その場合は孟浩然五十歳のころの作品になります。詩のあからさまな陳情から考えると若いころに作品と思われ、張説が岳州に左遷されていた開元三年(715)、二十七歳ころの作とするのが妥当でしょう。
  

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