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ティェンタオの自由訳漢詩 1952

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 盛唐46ー常建
   題破山寺後禅院     破山寺の後の禅院に題す

  清晨入古寺     清晨(せいしん)  古寺に入れば
  初日照高林     初日(しょじつ)  高林(こうりん)を照らす
  曲径通幽処     曲径(きょくけい) 幽処(ゆうしょ)に通じ
  禅房花木深     禅房(ぜんぼう)  花木(かぼく)深し
  山光悦鳥性     山光(さんこう)は鳥の性(さが)を悦(よろこ)ばしめ
  潭影空人心     潭影(たんえい)は人の心を空(むな)しうす
  万籟此都寂     万籟(ばんらい)  此(ここ)に都(すべ)て寂(せき)として
  但余鐘馨音     但(た)だ鐘馨(しょうけい)の音を余(あま)すのみ

  ⊂訳⊃
          清らかな朝  古びた寺に入ると
          朝の光が   樹々の梢を照らしている
          ほそ径は   曲がりながら奥に通じ
          禅房の辺り  花咲く木々が生い茂る
          山の輝きは  飛びまわる鳥を悦ばせ
          澄んだ淵は  人の心を洗い清める
          音はすべて  ひっそりと謐まりかえり
          遠く微かに  鐘馨の音が聞こえるだけ


 ⊂ものがたり⊃ やがて常建は隠者の生活に憬れるようになり、名山を歩きまわります。晩年は鄂渚(がくしょ:湖北省武漢市の西郊)に隠棲して、自由な生活を送ったと伝えられています。
 詩題の「破山寺」(はざんじ)は破山(江蘇省常熟県)にあった興福寺のことで、寺を訪ねたとき、寺の奥の禅院の壁に書きつけた詩です。「山光」は朝日を浴びた明るい山、「潭影」は淵の水が湛えている光、「万籟」はすべての物音です。「鐘馨」は鐘と馨(石板で作った打楽器の一種)のことで、共に寺で用いるものです。
 盛唐の世にあって不遇な常建でしたが、この詩には王維の晩年の詩に通じる禅詩の風格があります。宋代の詩人に愛唱され、のちに石碑に刻まれて破山に建てられたと伝えられます。

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