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ティェンタオの自由訳漢詩 1934

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 盛唐28ー儲光羲
    釣魚湾             釣魚湾

  垂釣緑湾春     釣(つり)を垂る   緑湾(りょくわん)の春
  春深杏花乱     春(はる)深くして  杏花(きょうか)乱る
  潭清疑水浅     潭(ふち)清(す)みて水の浅きを疑い
  荷動知魚散     荷(はす)動きて魚(うお)の散(さん)ずるを知る
  日暮待情人     日暮(にちぼ)   情人(じょうじん)を待ち
  維舟緑楊岸     舟を維(つな)ぐ  緑楊(りょくよう)の岸

  ⊂訳⊃
          春の日に   緑の入江で釣りをする
          春は深まり  杏の花も乱れ散る
          澄み切った淵は  浅いかと思われ
          蓮の葉が動けば  魚が逃げたと分かる
          日が暮れて  思う人を待っている
          柳の岸辺   緑の木陰に舟を繋いで


 ⊂ものがたり⊃ 詩題の「釣魚湾」(ちょうぎょわん)は釣りをする入江といった意味でしょう。ただし、この五言六句の詩は含意が深く、猟官の巷といった意味になります。詩は中二句の対句を挟んで左右の二対が対称的な字並びになっています。
 はじめの二句で春の盛りに「緑湾」で釣りをすると状況を述べます。春は官吏の任命・異動の季節です。中の対句は釣りを装っていますが、猟官の難しさや失敗を暗喩するものでしょう。
 結び二句の「情人」は恋人ですが、自分を推薦してくれる人と解することができます。その人を「緑楊」の岸に舟を繋いで待つのです。若いころは元気いっぱいであった儲光羲にも官途の苦労があったようです。
 儲光羲は累進して観察御史になりますが、安禄山の乱のとき反乱軍に捕らえられ、賊の朝廷に仕えたため、戦後、広州方面に流されて亡くなりました。享年は六十九歳くらいでした。    


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