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ティェンタオの自由訳漢詩 1844

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 南北朝45ー歌謠
   子夜歌              子夜歌

  落日出前門     落日(らくじつ)  前門(ぜんもん)に出(い)でて
  瞻瞩見子度     瞻瞩(せんしょく)するに  子(きみ)の度(わた)るを見る
  冶容多姿鬢     冶容(やよう)   姿鬢(しびん)多く
  芳香已盈路     芳香(ほうこう)  已(すで)に路(みち)に盈(み)てり
    〇                 〇
  芳是香所為     芳(ほう)は是(こ)れ香(こう)の為(な)す所
  治容不敢当     治容(やよう)は敢(あえ)て当たらず
  天不奪人願     天は人の願いを奪わず
  故使儂見郎     故(ゆえ)に儂(われ)をして郎(ろう)に見(まみ)えしむ

  ⊂訳⊃
          門前に立って  眺めていると
          夕映えの中を  君がやってくる
          豊かな髪    あでやかな姿
          道いっぱいに  よい香りが満ちわたる
                 〇
          よい香りって  香料のせいですよ
          艷やかなんて  とんでもありません
          神さまが  私の願いを聞きとどけ
          あなたに  会わせてくださいました


 ⊂ものがたり⊃ 南朝最後の王朝陳にはいる前に、歌謠をいくつか取り上げます。詩はもともと民間の歌謠が知的に洗練されて生み出されてもので、『詩経』国風はその最初のアンソロジーと言っていいでしょう。
 南北朝時代になると、知識人のつくる詩とは別に民間歌謡が盛んに作られるようになりました。その一部が知識人の手によって記録され、後世に残されます。歌謠に五言四句のものが多いのは、この時代になると庶民の生活感覚が農民的な四言のリズムから騎馬民族的な五言のリズムに変化したためだと説明されています。
 歌謠は一般に作者名がない、というより特定されていません。「子夜歌」(しやか)はもと呉歌と呼ばれる江南の民謡の一種であったようです。「子夜」という名の女性に始まったという伝えもあり、ほとんどが恋の歌です。
 掲げた二首は『楽府詩集』所載の四十二首のうちの一組で、男女の問答体になっています。二首は「冶容」と「芳香」が相関語(懸け言葉)になっていて、つながりが示されています。問答で見るかぎり、ロマンチックな男性に対して、女性の応答は醒めており、現実的です。なお、二首目の「儂」は呉地方の方言で、男女共に用いる自称です。

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